2021 Fiscal Year Research-status Report
Distance reconsideration in new trade theory: Empirical study in the agricultural sector
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20K15610
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
池川 真里亜 麗澤大学, 経済学部, 助教 (20786553)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農産物貿易 / 新貿易理論 / 距離 / 非物理的距離要因 / 阻害要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新貿易理論における非物理的距離の概念について,その理論的な意味づけを再検討し拡張する.従来の新貿易理論を用いた研究では,広義での輸送費用を引き下げる,あるいは引き上げる,国境やFTA,共通言語などの要因が,非物理的な「距離」,すなわち非物理的距離要因として用いられてきた.特に農産物貿易においては,農産物の財の特徴として,財の質の低下速度が速く,重量あたり単価が低いために相対的に輸送費用が高い,等の理由から,他産業と比較して,最も距離のもつ意味が重要である. 本研究では,非物理的距離要因に着目し,非物理的距離要因について理論的に検討する.具体的には,非物理的距離要因が,物理距離換算でどの程度離れた場合と同じくらいの影響をもつのかを検証するために,非物理的距離要因を物理距離に換算して定式化するフレームワークを構築し,非物理的距離要因のうち,何が最も貿易の阻害要因となるかを明らかにする. 特に2021年度は,2020年度におこなったベースモデルの再検討を行った.2020年度にベースモデルの構築を試みたものの,当初想定していた,理論モデルと整合的な推定結果を得ることができなかったため,物理距離と固定効果を同時に導入した形へと拡張を行った.ただし,価格効果への対処についてはさらに検討が必要であり,現在さらに拡張を行っている. これにより,物理的な二国間の距離,すなわち動かしようのない外部要因のみを考え,それ以外の貿易の阻害要因がまったくない状態を仮定した,理論的な(純粋な)物理距離の効果を検証する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は,2020年度におこなったベースモデルの再検討を主に行った.2020年度に,物理的な二国間の距離,すなわち動かしようのない外部要因のみを考え,それ以外の貿易の阻害要因がまったくない状態を仮定した,理論的な(純粋な)物理距離の効果を検証することを試みたものの,当初想定していた,理論モデルと整合的な推定結果を得ることができなかった.そのため,物理距離と固定効果を同時に導入した形へと拡張を行った.ただし,固定効果を導入したことによって,価格効果への対処についてはさらに検討が必要であり,現在さらに拡張を行っている.また,2019年以降のパンデミックの影響,2018年の米中の貿易が大きく外れ値となっており,現時点では2017年までのデータを用いて検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
物理距離を用いたベースラインモデルについては,固定効果を同時に導入することにより対処を行ったが,その場合には価格効果が検討できない問題に直面した.そこで,価格効果については固定効果から除いて別の価格代理変数として導入する方法を検討する. その後,当初の予定通り,物理距離のみを距離要因とした分析をベースラインとし,非物理的距離要因を距離要因の一部として導入した場合,ベースラインとどの程度の差異が生じ得るかを検証する.この比較により,あるひとつの非物理的距離要因,例えばFTAの締結が,二国間貿易に対してどの程度の影響を及ぼし得るのかを,要因ごとに検証する.
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Causes of Carryover |
2021年度も,新型コロナウイルスの世界的な流行の影響があまり改善せず,対面開催を予定していた海外学会等もオンライン開催となるなど,旅費として計上していた助成金を使用していない. また2022年度も,分析に使用していた貿易等に関するデータベースのライセンス(年間契約)およびArcGIS(年間契約)について,再度購入申請をする予定である.
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