2020 Fiscal Year Research-status Report
農産物自給率と食料安全保障:経済モデルによる国内食肉市場の安定性の分析
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20K15613
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
田中 鉄二 摂南大学, 経済学部, 講師 (40803482)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食料自給率 / 価格伝達分析 / 牛肉 / 豚肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に、まず様々な国の牛肉の自給率の効果を数量化する分析を行った。そこでは国内の牛肉小売価格と国際価格がどのように連動しているかをDCCーGARCHモデルを用いて、分析した。そこから、その動学的相関性と自給率がどのような関係にあるかを特定した。その結果、自給率が高まることは国際市場からのショックの伝達度合いを弱める事が明らかとなった。この研究は専門雑誌Sustainabilityに掲載された。また、牛肉の価格の構造変化を見る研究を行った。これは専門誌Humanities and Social Sciences Communicationsに掲載された。 豚肉に関する様々な国の自給率向上政策の効果に関する分析でも約10カ国の豚肉の純輸入国を選定し、その小売価格と国際価格の関係、そして自給率がその連動性に与える影響を分析した。これは論文として作成され、現在、専門誌であるFoodsに投稿され審査されている。 更に、日本にフォーカスを当てた牛肉市場の自給率政策の研究では、国産牛と輸入牛の卸売価格、それぞれが国際価格とどのような関係にあるかを分析した。その結果、自給率と国産牛の在庫は国際市場からのショックを弱める役割を果たさないが、輸入牛在庫は役立つことが分かった。これは日本国内において国産牛と輸入牛に不完全代替が存在する事を示している。この結果から日本政府が進めている自給率の向上は少なくとも牛肉分野で国内市場の安定性を求めるのには役立たないことを示唆する。そこで用いられている巨額の補助金を輸入牛在庫を増やすことに用いる方がより有効に国際市場からのショックを弱める効果をもつことが言える。この研究はFood Policyによって審査されている。 これまで掲載された論文(Sustainability)の結果をより広く知ってもらうために、電子書籍として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画としては牛肉と豚肉の自給率が国際市場から受ける価格伝達にどのように作用するか、という問いに対して答えを出す研究を行う事であった。2020年度だけで、既に2つの研究が完成され国際的な専門誌に掲載された。更に2つの研究も基本的に完成され、国際的な専門誌で審査されている。そのため、2年間で行おうと予定していた研究の殆どが順調に行われてきているので、当初の計画よりも進展が早いと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで大変順調な研究の進行状況となっているが、できれば、もう少し本研究テーマに関連する論文が作成できればと考えている。
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Causes of Carryover |
研究を加速するために研究補助者を雇用した。そのために次年度の金額を繰り越した。
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