2021 Fiscal Year Research-status Report
植物の機能性向上のためのUV-B多方向照射技術の開発
Project/Area Number |
20K15627
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 英生 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (40729852)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 植物工場 / 環境ストレス / 紫外線 / 機能性物質 / ファイトケミカル / アカジソ / レモンバーム |
Outline of Annual Research Achievements |
UV-B照射は植物の機能性成分の高濃度化に有効であることが示されている。しかし、上から下への下方照射の場合、UV-B放射を受けにくい下位葉では機能性成分濃度は増加しにくく、実用化には効果的な照射技術の開発が必要になる。下位葉に十分なUV-B照射を行うためには、群落下部からの上方照射が有効であると考えられるが、葉の背軸側へのUV-B照射が機能性成分濃度に与える影響は明らかになっていない。そこで今年度は、下位葉の機能性成分濃度を高めることが可能なUV-Bの照射技術の開発を目的とし、葉の背軸側におけるUV-B放射束密度(以下、UV-B強度)が機能性成分濃度に及ぼす影響を調査した。背軸側からのUV-B照射は従来の向軸側へのUV-B照射と同様に葉のロズマリン酸(RA)濃度を増加させることが明らかとなった。他方、UV-B強度を高めていくと精油成分濃度は減少する傾向がみられた。これはUV-B照射により、葉の背軸面のトリコームが破壊されることでPAが揮発してしまうことによると考えられた。これらのことから、背軸面へのUV-B照射の最適な強度は、向軸面への照射強度よりも弱めに設定する必要があることが明らかとなった。片面照射に加えて、向軸面、背軸面の両側からUV-Bを照射した場合の葉の機能性成分濃度への影響も調査を行った。RAは葉の表皮に蓄積されるため、両側照射により葉の両面においてRAの蓄積量が増え、そのことでRA濃度が高まることが予想されたが、同じUV-B曝露量下での両側照射によるRAの増加効果は確認されなかった。以上より、下位葉へのUV-B照射は背軸面から行うように照明を配置することで、植物体全体の機能性成分濃度の向上が行えると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、多方向照射の照明装置の設計を行う上で必要となる葉の背軸面へのUV-B照射の影響を明らかにし、最適な照射強度を明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた個葉へのUV-B照射の最適条件をベースとして、植物体全体で機能性成分含有量が短期間で最も大となる照射パターンを求め、効率的に植物の機能性を高めることが可能な照明方法を提示する。加えて、実生産プラントを模した植物工場実験室(既有)の栽培棚にて効果の実証を行う。
|
Causes of Carryover |
世界的な資材不足の影響により、今年度購入予定であった物品の納品を次年度に変更した。購入を見送った物品については、試験計画に合わせて購入予定である。また、新型コロナウイルス感染症の流行により、参加を予定していた学会や小集会等もオンラインでの限定的な開催となったため、旅費の発生も無かった。次年度以降については、参加予定の学会が対面で行われる予定である。
|
Research Products
(4 results)