2022 Fiscal Year Annual Research Report
ため池からの温室効果ガス放出量の定量評価と放出機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
20K15636
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂部 綾香 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (40757936)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メタン / ため池 / 渦相関法 |
Outline of Annual Research Achievements |
兵庫県加古川市に位置し,集水域が主に水田からなるため池を対象に,渦相関法によるメタン・二酸化炭素ガス交換量と環境条件の観測を継続して行い,2年間のデータを取得した.メタンについては2年とも放出量が夏に増大する季節変化を示した.メタン放出量は水温の上昇に応じて指数関数的に増加し,指数関数で回帰した結果,決定係数は2021年が0.34, 2022年が0.43であった.水温が25度を超えるあたりから,メタン放出量は増加しており,夏季はため池が強力なメタン排出源となることが明らかになった.二酸化炭素については,ガス交換量のばらつきが大きいものの,夜間に放出,昼間に吸収の傾向があった.観測を行ったため池が二酸化炭素の吸収源として機能していることが示唆されたが,今後は池周辺の土地利用における二酸化炭素ガス交換の影響評価など,さらなるデータの品質管理を行う必要がある.最終年度は池の水質と温室効果ガス動態の関係を調べるために,月に1から2回の頻度で,池内複数地点の表層水と鉛直方向の3深度で採水を行い,各種イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで,溶存有機態炭素濃度をTOC-Lで,溶存全窒素濃度をTOC-LのTNユニットTNM-Lで,全窒素濃度を吸光光度計で分析した.その結果,5月から7月にかけてリン酸イオン濃度,全窒素濃度,溶存有機態炭素濃度が増加したことから水田での農作業が池への流入水の水質に影響したと考えられた.また,溶存有機態炭素濃度とクロロフィルa濃度には正の相関がみられたことから,集水域の土地利用を反映した水質の変化が池内の植物プランクトンの増減に影響を与え,メタン・二酸化炭素ガス交換量に影響を与えた可能性がある.今後,水質とガス交換量の関係をさらに解析する必要がある.
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