2020 Fiscal Year Research-status Report
根粒菌によるサツマイモつる割病抵抗性誘導メカニズムの解明と新規病害防除技術の確立
Project/Area Number |
20K15637
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
城 惣吉 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20721898)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サツマイモ / 根粒菌 / つる割病 / 病害抵抗性 / 防除技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、根粒菌を接種したサツマイモにおけるサツマイモつる割病に対する抵抗性誘導メカニズムを解明し、得られた知見から農作物生産における環境負荷を低減した生産技術の確立に貢献することを目的としており、令和2年度は以下の研究を実施した。 1)根粒菌の接種によるサツマイモつる割病の抑制効果は栽培温度の影響を受けるのか? 温度傾斜型チャンバーを用いて低温区、中温区、高温区の異なる温度環境(栽培期間中の日平均気温は低温区が24.7℃、中温区が25.5℃、高温区が27.1℃)で根粒菌およびつる割病菌を接種したサツマイモを約8週間栽培し、生育状況やつる割病の発生状況を調査した。生育状況については、根粒菌の接種区と無接種区との間で有意差は認められなかったものの、主茎長や地上部乾物重、塊根乾物重は無接種区の方が値がわずかに大きくなる傾向を示した。また、栽培温度の生育への影響については、主茎長と地上部乾物重は中温区で、塊根数や塊根乾物重は低温区で値が大きくなる傾向にあり、塊根数と塊根乾物重については栽培温度の上昇に伴って値が減少する傾向を示した。つる割病の発生状況については、低温区の根粒菌接種区で1株だけ観察されたのみで、その他の処理区ではその症状は観察されず健全に生育しており、根粒菌の接種の有無や栽培温度の影響による評価ができなかった。 2)根粒菌の接種によるサツマイモつる割病抑制効果の再現性の確認 1)の調査でサツマイモつる割病に罹患したサツマイモを1株しか確認することができなかった。そこで、1)と同様にサツマイモに根粒菌およびつる割病菌を接種し、人工気象室内(明期:28℃、16時間 暗期:23℃、8時間)で10週間栽培し、生育状況とつる割病の発生状況を調査した。生育状況については、接種区、無接種区ともにほぼ同様の値を示した。つる割病の発生状況については、罹患株の発生は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は温度傾斜型チャンバーおよび人工気象器を用いた栽培試験(サツマイモの生育状況およびつる割病の発生状況調査)、サツマイモ体内に局在する根粒菌の検出やサツマイモの病原抵抗性関連遺伝子の発現解析に用いるPCRプライマーの作製を実施し、計画している研究内容を予定通り進めることができた。しかし、栽培試験においてサツマイモつる割病に罹患したサツマイモを観察することができず、根粒菌の接種によるサツマイモつる割病の抑制効果について正確に検証することができなかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で栽培試験を行うための事前調査を詳細に行なえなかったことも原因の一つとなっているが、本研究課題における重要な現象を再現できていないため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
温度傾斜型チャンバーおよび人工気象器を用いた栽培試験において、サツマイモつる割病の再現性を確認することができなかったことから、まずは、つる割病が発生する条件(つる割病菌の培養方法や接種濃度など)を検討する。また、つる割病に弱いサツマイモ品種を用いて、昨年度供試した品種との耐性を比較する。つる割病の発生を確認することができたのち、再度、温度傾斜型チャンバーもしくは人工気象器を用いて栽培試験を行い、根粒菌の接種によるサツマイモつる割病の発生抑制効果を検討する。さらに、サツマイモつる割病の再現性の確認や栽培試験と同時並行して、昨年度の調査でサンプリングしているサツマイモの茎や茎葉を用いて、接種した根粒菌の局在や根粒菌の接種によるサツマイモの病原抵抗性関連遺伝子の発現解析を実施し、円滑に研究を展開する。
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Causes of Carryover |
年度当初に円滑に研究を遂行できなかった期間があり、その期間中に実施予定の研究が行えなかったために次年度使用額が生じた。この助成金については年度当初に行えなかった研究を翌年度当初に行うための物品の購入に使用し、翌年度分として請求中の助成金については該当年度に計画している研究を遂行するために必要な物品(サツマイモ苗、栽培資材、試薬など)を購入するために計画的に使用する。
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