2021 Fiscal Year Research-status Report
根粒菌によるサツマイモつる割病抵抗性誘導メカニズムの解明と新規病害防除技術の確立
Project/Area Number |
20K15637
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
城 惣吉 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20721898)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サツマイモ / 根粒菌 / つる割病 / 病害抵抗性 / 防除技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、根粒菌を接種したサツマイモにおけるサツマイモつる割病に対する抵抗性誘導メカニズムを解明し、得られた知見から環境負荷を低減した生産技術の確立に貢献することを目的としており、令和3年度は以下の研究を実施した。 1)根粒菌の接種によるサツマイモつる割病の抑制効果は栽培温度の影響を受けるのか?:温度傾斜型チャンバーを用いて、低温区と高温区の異なる栽培温度環境で根粒菌およびつる割病菌を接種したサツマイモ3品種(べにはるか、沖縄100号、種子島紫)を約6週間栽培し、生育状況やつる割病の発生状況を調査した。生育状況については、栽培温度の上昇に伴い主茎長や地上部乾物重の値が減少する傾向を示したが、根粒菌の接種により主茎長や地上部乾物重の値が大きくなる傾向を示した。つる割病の発生状況については、低温区の根粒菌無接種区の沖縄100号で1株のみ観察されたが、他の品種や高温区ではその発生が確認されなかったこともあり、根粒菌接種の有無による正確な評価ができなかった。 2)接種した根粒菌のサツマイモ体内での局在性調査:サツマイモ内に移行していると考えられる根粒菌の局在性について、PCR法を用いて調査を行った。根粒菌を接種したサツマイモの葉柄および葉からDNAを抽出し、それを鋳型に3種類のプライマーを用いて根粒菌の特定の遺伝子をターゲットにPCRを行ったところ、1つのプライマーは増幅産物は得られたものの接種した根粒菌のものとは異なるサイズを示し、あとの2つのプライマーでは増幅産物を得られなかった。 3)サツマイモの病原抵抗性関連遺伝子の検出:サツマイモの病原抵抗性関連遺伝子をターゲットとした複数のプライマーを用いて、サツマイモ(べにはるか)から抽出したDNAを鋳型にPCRを行った。異なる品種の遺伝子情報を基に作成されたプライマーであったが、目的遺伝子の増幅を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はサツマイモの病原抵抗性関連遺伝子の発現解析を行う予定であったが、計画通りに進めることができなかった。一方で、人工気象器を用いてサツマイモつる割病の発生抑制効果の再現性確認試験を行った結果、根粒菌接種区は15日目までに66.7%が、無接種区は6日目までに100%の苗に褐変症状が観察されたことから、根粒菌接種による発生抑制効果を確認することができた。しかし、温度傾斜型チャンバーを用いた栽培試験においてサツマイモつる割病の発生状況を正確に把握できなかったこともあり、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培試験においてサツマイモつる割病の発生状況を正確に調査できなかった原因の一つとして、継代培養によるサツマイモつる割病菌の病原力低下が挙げられる。そのため、病原力を維持したつる割病菌株を分与してもらい、それを供試する予定である。また、これまではサツマイモ苗につる割病菌を接種していたが、苗を移植する土壌につる割病菌を接種するなど接種方法を検討する。サツマイモつる割病の発生を確認したのち、温度傾斜型チャンバーもしくは人工気象器を用いて栽培試験を行い、根粒菌接種によるつる割病の発生抑制効果を検討する。その際、サツマイモつる割病に弱いサツマイモ品種を用いることで、病原抵抗性について一般的に普及してる品種との比較解析を行う。さらに、これらの調査に加え、接種した根粒菌接種によるサツマイモの病原抵抗性関連遺伝子の発現解析を実施する。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも旅費を使用しなかったために次年度使用額が生じた。当該助成金については、次年度に計画している研究を遂行するために必要な物品(サツマイモ苗、栽培資材、試薬など)を購入したり、旅費として計画的に使用する。
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