2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K15641
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小坂井 千夏 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (90637670)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境DNA / 鳥獣害 / 特定外来生物 / アライグマ / 食性解析 / メタバーコディング / LAMP法 / 食痕 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥獣害対策は加害した動物種や加害された作物種を正しく判別し、加害種に応じた効果的な対策を実施する必要がある。特にアライグマ等の特定外来生物では、生息や被害の早期発生が、生物多様性保全や人獣共通感染症リスクを下げる観点からも非常に重要である。そこで本研究で、農作物等に残った加害動物のDNAを用いて加害種を早期に判別する手法開発を行った。 最終年度2023年度はアライグマが食べた作物から簡易・迅速にDNAを採材する簡易法を複数開発した。いずれの採材法でもLAMP法によってアライグマDNAの増幅を確認した。さらに、被害作物種を環境DNAで把握する方法(糞や胃内容物のメタバーコディング分析から食べられた作物のDNAを調べる)について、どの程度の期間、糞から採食物DNAが検出できるか実験し、1日前後の短期間しか検出されないことを明らかにした。 期間全体を通じた成果は以下の通りである。当初は、食痕等から加害動物由来のDNAを分析して食痕と加害動物の両者が判明している事例を多く集めることで、食痕形状から動物種を特定できるか検証する計画であった。しかし、食痕からの加害動物DNAの分析について本研究で開発した簡易採材法(当初の計画にはなかったもの)と、LAMP法を用いることで簡単・迅速な分析法を開発できた。このため、食痕以外にも廃果場等の環境中からの動物DNA分析に広く応用できる簡易法の確立に重点を置くこととし、この目的は達成できた。なお、鳥獣の早期発見に関連した環境DNA分析技術の精度検証も行い、アライグマの利用した水から従来法で最長1カ月以上検出できること(環境中の加害動物DNAの残存期間の解明)や、加害された作物DNAは1日程度の短期間しか糞から検出されない(環境DNAを用いた被害作物の判別可能期間)こと等を明らかにした。
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