土壌物理性の人為的管理による水田からの温室効果ガス放出削減

2023 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 20K15642
• Research Institution: National Agriculture and Food Research Organization
• Principal Investigator: 中嶋 美幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 主任研究員 (20370611)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 温室効果ガス / 水田 / メタン / 乾田直播 / 鎮圧 / 土壌物理性

Outline of Annual Research Achievements

世界的に削減が望まれている温室効果ガス(GHG)のうち、水田から放出されるメタン(CH4)は土壌、気象、作物生育、栽培管理などにより圃場間・年次間で大きくその量が変動することが知られている。本研究の目的は地表面鎮圧を伴う新しい乾田直播栽培体系の導入が水田からのGHG放出量に与える影響の解析とそのメカニズム解明である。
本研究は圃場試験と室内モデル試験および影響解析から構成されている。研究期間中、圃場試験において乾田直播体系と移植体系の水稲栽培期間中GHG放出量ならびに影響因子となりうるデータを定期的または連続的に取得するとともに、特に鎮圧による土壌物理性の変化が根伸長分布を介してGHG放出に影響を与える可能性に着目して室内モデル試験を実施した。
本年度は昨年度に引きつづき、研究期間中に改良した方法での室内モデル試験を実施してデータ数を確保し、圃場試験の年次変動を含む結果と併せてメカニズム解明を行う予定であったが、研究代表者が病気により休職となったため計画を達成することができなかった。

研究期間全体では、水田圃場からのCH4放出量には大きな年次変動があるが、水管理が同等な条件下では鎮圧直播体系は移植体系に比べ常に放出量が小さく抑えられることが明らかとなった。また、鎮圧直播体系でCH4放出量が小さくなる要因として根伸長の深さ分布の違い、すなわち鎮圧作業により土壌を締め固めることで水稲根が土壌表層に集中することに着目してモデル試験を行った結果、根域の浅さはCH4放出を一意に削減する条件ではないことが示唆されたが、データ数が不十分であるため更なる検討を必要とする。