2022 Fiscal Year Research-status Report
鳥類の精子貯蔵管をモデルとした精子選択メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K15648
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松崎 芽衣 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (70848085)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | QTL-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最後に交尾した雄の精子が受精に有利となるlast male sperm precedence (LMSP)の分子メカニズムを、ウズラを用いた研究により明らかにすることを目的としている。当初の予定では、ゲノム編集を利用して精子特異的タンパクの遺伝子へ蛍光タンパク遺伝子を挿入することにより精子を蛍光標識し、得られた蛍光標識精子を用いて精子を個体ごとに識別する予定であったが、ウズラでのゲノム編集が難航しているため、蛍光色素による標識でこれを代替することとした。 一方、本研究課題を遂行する過程で中片部長が長いウズラ精子が受精に有利になることを明らかにしたため、2022年度はウズラ精子中片部長を決定する量的形質遺伝子座(QTL)を同定するための実験を実施した。短い中片部長をもつウズラ系統と長い中片部長をもつウズラ系統を交配してF2集団を作出し、F2集団のうち短中片部精子を産生する個体および長中片部精子を産生する個体のゲノム DNAについて、whole-genome sequence(WGS)により塩基配列のリードデータを取得した。リードデータを用いたQTL-Seq解析によりウズラ精子中片部長に関わるQTL領域を同定し、これらのQTL上に位置する遺伝子のうちアミノ酸翻訳領域に多型が存在する候補遺伝子を102個決定した。候補遺伝子のうち6遺伝子(RNF17, IFT81, PDE8B, TBCA, JMY, PAIP1)は、マウス等において精子形成への関与が既に報告されている遺伝子であった。精子中片部の長さは構造的な観点から精子の運動特性に関与する可能性があり、運動性の高い精子を産生する雄ではより明確なLMSPが観察されるという先行研究から、今後は精子中片部長と運動性およびLMSPとの関連を調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では予期していなかったが、精子中片部長がウズラ精子の受精に関与することを見出しており、2022年度は精子中片部長を決定する候補遺伝子を複数同定することができた。また、これらの候補遺伝子については遺伝子多型の位置およびパターンも特定しており、これらの多型を利用したマーカーが父性鑑別の試験に利用可能であることから、当初の研究計画からはやや遅れているものの、本研究課題は着実に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に精子中片部長を決定する遺伝子の候補およびその多型の位置・パターンを同定しているため、これらの多型を利用した鑑別マーカーを作成し、父性鑑別および候補遺伝子の多型と父性との関連を調査する予定である。また、精子中片部長がLMSPに与える影響を明らかにするため、精子の運動と中片部長との関係を調査するとともに、蛍光標識精子を用いてin vitroおよびin vivoにおいて精子貯蔵管への精子侵入の競合試験等を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
論文投稿の遅れにより、論文投稿料に計上予定だったその他の経費分の次年度使用額が生じた。当該論文は2023年度に投稿予定であり、投稿料を2023年度分に計上する予定である。
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