2021 Fiscal Year Research-status Report
ウシ高走流性精子のエピゲノム変化に着目した低受胎要因の解明
Project/Area Number |
20K15651
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
緒方 和子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (40761614)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精子 / ウシ / マイクロ流体デバイス / 運動性 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
精子の運動性は精液の質の一般的な評価指標とされている。一方で、ウシ凍結精液の中には、融解後の運動性が良好でも受胎性は低いものが存在していることが知られており、人工授精に用いる前に精液の受胎性をより精度高く予測できる評価指標が求められている。精液中には運動能や寿命の異なる多数の精子が混在しているが、本研究では、雌性生殖道にて受精部位まで到達でき、受精に関与すると考えられる高い走流性を有する精子(高走流性精子)を評価対象とすることで、どれも運動性は十分であるが受胎性が異なる精液間における精子の違いを検出することを試みる。本課題では特に、運動性の特徴、先体および核の状態、受胎性と関連しうるエピジェネティクス修飾状態に着目し、受胎能の異なる精液間での差異を明らかにすることを目的とする。 今年度は精子集団の運動性の特徴をより正確に評価できる手法の開発を目指し、精子運動解析装置(CASA)により得られた個々の精子の運動性データの活用を検討した。CASAで解析された個々の精子の運動計測値を抽出し、クラスター分析および主成分分析を用いて精子の運動性の特徴を分類した。これにより、平均値で丸めない精液の運動性の表現が可能となることを示した。また、精子の受精能の評価については、受精初期の前核形成の進行に焦点を当てた前核形成能の評価系を立ち上げた。以上より得られた成果について、2021年9月に開催された日本繁殖生物学会にて研究発表を行った。また、成果の一部について、2022年2月に日本胚移植技術研究会大会で研究発表を行い、奨励賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に続き、選別捕集精子の体外受精による前核形成率、受精率および胚発生率のデータを蓄積した。今年度は選別捕集精子の受精能獲得状態や精子濃度に適した媒精条件を検討した。また、体外受精後の前核形成速度による評価を進めた。一方で、精子の受精能の差を評価するのに十分な精子濃度が得られない問題があり、運動性を利用した異なる選別捕集方法の検討および捕集精液の濃縮方法の改良を実施した。得られた高走流性精子について、先体およびクロマチンの正常性の染色評価を進めた。また、精液の運動性の評価では、CASAで評価した個々の精子の運動計測値を解析し、泳ぎ方の特徴に基づいた分類を行うことで、精液全体の運動性の特徴を表す新たな方法を開発した。受胎性の異なる精液から選別捕集した高走流性精子間の差異の検出のために、精子の運動性データの蓄積を進めている。次年度は受胎率の明らかな市販の凍結精液を用いて、マイクロ流体デバイスで選別捕集して得られた高走流精子の特性を調査する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、受胎性の判明している凍結精液を供試し、選別して得られた高走流性精子の特徴について受胎性との関連がみられるかを解析する。選別捕集後の精子における受精能および正常性の違いを検出するために、先体およびクロマチンの正常性を評価する。エピジェネティクス修飾状態については、受胎性との関連が報告されている精子核DNAメチル化可変部位について修飾状態を評価する。運動性については、機械学習による分類法の精度を高め、受胎性の異なる精液についてCASAでの運動計測を実施し、各精液の運動性の特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた抗体および分析キット類の一部について、他研究者との共用が可能となったため今年度の購入は不要となった。以上より、次年度に使用する試薬およびキット類の購入に充てることとした。また、2021年9月に参加した日本繁殖生物学会大会、2022年2月に参加した日本胚移植技術研究会がオンライン開催であったこと、他学会の参加は見送ったことから旅費が不要となった。
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Research Products
(2 results)