2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of molecules involved in pathogenic mechanism and innate immune evasion of Streptococcus suis
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20K15658
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
黒木 香澄 (石田香澄) 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (80760272)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 豚レンサ球菌 / Streptococcus suis / 全ゲノム解析 / グルコサミノグリカン分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
豚レンサ球菌 (Streptococcus suis)はヒトやブタに髄膜炎や心内膜炎を起こすが、その発症機序については不明な点が多い。本年度は豚レンサ球菌に加えて、近年まで本菌に分類されていたStreptococcus parasuisとStreptococcus ruminantiumも比較対象とし、比較ゲノム解析を行った。S. parasuisとS. ruiminatiumは豚レンサ球菌と近縁であるものの、宿主域や毒力が異なることが知られている。特にS. parasuisは毒力が低い株が多く、環境中からも検出される。まずS. parasuis 4株とS. ruiminantium 3株の完全長ゲノム配列を決定し、NCBIで公開されていた豚レンサ球菌 63 株とS. ruminantium 2株の全ゲノム配列情報と合わせて比較ゲノム解析を行った。昨年度に、病原性を有するST型(ST1, ST7, ST28など)で宿主のグリコサミノグリカンを分解する酵素と分解産物を取りこむPhosphotransferase system、分解産物を代謝するEntner Doudoroff経路の酵素をコードする遺伝子群が保存されていることを明らかにしたが、この遺伝子群はS. ruminantium 全5株にも保存されていた。しかしながら、S. parasuisにはこの遺伝子群は保存されていなかった。また、代謝経路に関する遺伝子の保有状況をKEGGデータベースを用いて調べたところ、豚レンサ球菌とS. ruminantiumではS. parasuisに比べて糖代謝に関与する遺伝子数が多く、アミノ酸代謝に関与する遺伝子数が少なかった。以上より、豚レンサ球菌とS. ruminantiumは宿主に適応し、S. parasuisは環境中でも生存できるように適応していったことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、細胞培養系を用いて豚レンサ球菌の細胞接着性や貪食抵抗性を調査する予定だったが、未実施のため「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの比較ゲノム解析により、豚レンサ球菌の強毒株には機能未知の遺伝子が6個保存されていること、また病原性を有する豚レンサ球菌と、その近縁種であるS. ruminantiumにはグリコサミノグリカン分解酵素などをコードする遺伝子群が保存されていることを明らかにした。今後は、これらの遺伝子の機能を明らかにするために、塩基配列・アミノ酸配列情報から機能を予測するとともに、欠損株または過剰発現株を作製して機能解析を行う。また、これらの遺伝子の他菌種における分布状況を調査することで、宿主適応や病原性との関連性を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当初に計画していた、細胞培養系の実験を実施しなかったため、実験消耗品の支出が計画よりも少なくなった。また、参加した学術総会がオンライン開催だったため、旅費が発生せずに、次年度使用額が生じた。次年度は、本年度に得られた研究成果をもとに計画した実験系(豚レンサ球菌の病原性や宿主適応に関与すると示唆される遺伝子の機能解析)に必要な物品を購入するために、次年度使用額を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)