2020 Fiscal Year Research-status Report
野鳥と吸血昆虫から探る新興アルボウイルスの生態解析
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20K15671
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小林 大介 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 研究員 (40829850)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 節足動物媒介ウイルス / アルボウイルス / 新興ウイルス感染症 / 吸血昆虫 / ヌカカ / ブユ / ダニ / 野鳥 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに日本国内で採集された鳥類吸血嗜好性のハエ目昆虫類とダニ類を対象として、それらの保有するウイルス叢の解析を実施した。その結果、東京都で捕集されたニワトリヌカカおよびヒロシマツノマブユから、それぞれ様々な分類群に属する3種類の新規ウイルスが検出された。このことから、これまでウイルスの媒介者としてあまり注目されることのなかった吸血性のハエ目昆虫においても、ウイルス媒介者として重要な蚊やマダニと同様に、多様なウイルスを保有している実態が今回明らかとなった。 さらに国内のイワツバメの巣材から採集されたツバメヒメダニのウイルス叢を解析した結果、ニャウイルス様の配列が検出された。検出された配列の解析を行ったところ、この配列は新規のニャウイルスに由来することが判明し、本ウイルスをSekira virus(SEKRV)と命名した。ニャウイルスはヒメダニ媒介性のアルボウイルスの一群であり、世界各地のヒメダニや野鳥から分離あるいは検出されている。これまでに日本国内からは、岩手県のウミネコの営巣地で採集されたMidway virusの存在が知られるのみであったが、今回新たなニャウイルスの存在を確認することができた。興味深いことに今回検出されたSEKRVは、ニャウイルスが通常コードしているウイルス糖タンパク質(G)とマトリックスタンパク質(M)の遺伝子を欠損していることが、配列解析の過程で明らかとなった。このようなGとM遺伝子を欠損しているニャウイルスの野外サンプルからの検出は、世界初の報告となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、鳥類吸血嗜好性の吸血性ハエ目昆虫や野鳥の巣材に生息するヒメダニから多数の新規ウイルスを検出することができ、またこれら検出されたウイルスの遺伝子構造解析や分子系統解析などを行うことによって、詳しいウイルス性状の解析を行うことができた。さらに、これらの研究成果を取りまとめ、欧文誌上で報告することができたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス流行による移動制限のため、野外で新たな研究試料の採材ができない場合は、これまでに収集したサンプルの解析を実施する。これまでの研究に引き続き、国内で採集された吸血性ハエ目昆虫やダニ類が保有するウイルスを調査するため、培養細胞を用いたウイルス分離や、次世代シークエンサーによるウイルス叢解析を実施し、これら媒介節足動物の保有するアルボウイルスなどの実態を明らかにする。また、これまでに収集している野鳥の血液サンプルからもウイルス検出などを実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行による移動制限のため、当初の計画通りに野外調査が実施できず、次年度へ予算を繰り越すこととした。多様な吸血性節足動物サンプルを採材するため、令和3年度は昨年度の調査を延期した分、国内複数カ所での野外調査の実施を計画している。
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Research Products
(3 results)