2022 Fiscal Year Research-status Report
家畜に異常産を引き起こすウイルスの小動物感染モデルの開発
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20K15677
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上間 亜希子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員 (20630156)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルボウイルス / ハムスターモデル / 蛍光ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は「家畜に異常産を引き起こすウイルスの小動物感染モデルの開発」である。家畜に異常産を起こすシュマーレンベルグウイルス(SBV)とアカバネウイルス(AKAV)を用いてハムスターモデルを確立する。前年度までに作出した蛍光SBVのin vitroでの性状解析とハムスターへの感染実験を実施した。 1. GFP/42-SBV, GFP/38-SBV, GFP/36-SBVと親株のGFP-SBVについてウイルス濃縮を行い、高力価のウイルスを得た。 2. 培養細胞における蛍光SBVの性状解析を行なった。全ての組換えウイルスのプラックサイズは野生型(rSBV)より小さかったが、組換えウイルス間であまり差はなかった。GFP/38-SBVとGFP/36-SBVは似たような増殖曲線を描き、GFP/42-SBVはこれら2つのウイルスと比べて力価が低かった。感染細胞において、GFP/42-SBV, GFP/38-SBV, GFP/36-SBVはCPEが起こる前に蛍光を検出でき、時間経過による蛍光発現はGFP/38-SBVが最も早かった。 3. 蛍光AKAVを妊娠日齢7日目(n=2), 8日目(n=1), 9日目(n=2), 10日目(n=1), 11日目(n=1)のシリアンハムスターに皮下投与した。出生子の死亡率は、妊娠9日目投与が80%と最も高く、妊娠7日目と11日目投与では全て生存していた。出生子を実体蛍光顕微鏡で観察した結果、生死に関わらずGFP蛍光は見られなかった。妊娠8日目にウイルス投与した個体を5日目に開腹し胎子を観察したが、蛍光は検出できなかった。 4. GFP/38-SBVを妊娠9日目のハムスターに皮下(n=2)および腹腔内投与(n=1)した。皮下投与群では死産は見られず、腹腔内投与では7匹中1匹が奇形を伴う死産、1匹が虚弱子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度、2021年度はコロナ禍の影響で、研究を何度も中断せざるを得ない状況があった。また普通の継代では蛍光SBVバリアントの力価が上がらないことが分かった。以上のことから計画の進捗にやや遅れがあったものの、ウイルス濃縮を行うことで高力価のウイルスを得ることができ、2022年度はこれらを用いてin vitroおよびin vivoの実験を実施することができた。1年間期間延長したことで当初の計画通り、妊娠ハムスターにおけるAKAVとSBVの感染様式の解析を行えるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗具合と新型コロナウイルスの感染状況から、2023年度の推進計画を以下のようにする。 実験動物として購入したシリアンハムスターは冬季に質の悪化がみられるようで、実験途中で死んでしまうケースが多発し、妊娠日数を振った蛍光AKAV投与のn数が揃わなかった。傾向は分かったものの、(i)蛍光AKAV投与のn数を増やして異常産に影響する感染時期を確定する。(ii)GFP/38-SBVが最も異常産を起こす接種方法を検討する。AKAVと異なり腹腔内接種や皮下接種ではあまり死産が起きないことが分かったので、頸静脈内接種、経膣接種、子宮内接種を試す。(iii)胎子の蛍光検出できる条件を検討する。感染1日目、2日目、3日目、4日目に開腹し、胎子を実体蛍光顕微鏡で観察する。AKAVで蛍光検出できた場合、SBVで同様に観察する。(iv)妊娠日齢で死産の数が顕著に変わるため、母体中にウイルスが存在する期間を調べる。ウイルス投与後に継時的に採血して中和試験もしくはプラックアッセイを行う。
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Causes of Carryover |
本研究は、開始当初からコロナ禍の影響で実験を何度も中断せざるを得ない状況があり、なかなか思うように研究を進められなかったため、1年間期間延長を申請した。最終年度にあたる2023年度は動物実験を含む感染実験を多く行う予定である。 内訳としては、画像データの取得に不可欠な実体蛍光顕微鏡用カメラを備品として計上する。消耗品については、妊娠ハムスターやマウスを含む実験動物、遺伝子組換え実験, 感染実験に使用するガラス・プラスチック器具類, 試薬類が多く必要となる。その他、学会発表の旅費、論文投稿時の校閲費や投稿費等に充てられる。
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