2022 Fiscal Year Research-status Report
腎疾患の犬と猫において腎臓の脂質代謝異常が尿中脂質プロファイルに与える影響
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20K15679
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
高島 諭 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (70734664)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂肪酸 / 超高速液体クロマトグラフィー質量分析 / SREBP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病に罹患した猫(CKD猫)と罹患していない猫(非CKD猫)の腎臓組織における脂肪滴の局在について、組織のホルマリン固定時に溶出した脂肪滴の痕跡である空胞を観察することで比較した。空胞は、糸球体領域にほとんど存在しなかったが、尿細管領域に多く存在し、その割合はCKD猫において非CKD猫よりも高い傾向を示した。次に、CKD猫と非CKD猫のそれぞれの腎臓組織について、含有する脂肪酸の種類と量を超高速液体クロマトグラフィー質量分析(UPLC-MS/MS)により網羅的に解析するとともに、脂肪酸代謝に関わる転写因子(PPARγ、PPARαおよびSREBP1)の発現量をリアルタイムRT-PCRにより定量した。猫の腎臓に含まれる脂肪酸種はC16:0、C16:1およびC18:0が多く、これらの含有量は総じてCKD猫のほうが非CKD猫より多い傾向を示した。CKD猫の腎臓におけるPPARαとPPARγの発現量は非CKD猫の腎臓と同等であったが、SREBP1の発現量は非CKDより多い傾向を示した。これらの結果から、CKD猫の腎臓ではSREBP1の発現が増加し、尿細管領域へのC16:0、C16:1およびC18:0などをはじめとする脂肪酸の蓄積が増える可能性が考えられた。また、腎臓病または健常の猫と犬それぞれにおいて、尿中に存在する脂肪酸種をUPLC-MS/MSにより網羅的に定量して比較した。腎臓病の猫や犬では、尿中の脂肪酸含量が健常な猫や犬に比べて多く、その傾向はC16:0、C16:1、C18:0およびC18:1といった脂肪酸種において顕著であった。以上のことから、腎臓病の猫では脂肪酸が腎臓の尿細管領域に蓄積し、尿への排泄も増加すると考えられ、腎臓病の犬でも同様である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腎臓組織中および尿中の脂質のうち脂肪酸についての網羅的分析を実施できたが、定量条件の設定に時間を要してしまいステロールなど他の脂質の分析を実施することができなかった。また、腎疾患を有する動物の腎臓組織の入手に苦慮してしまい、研究に利用できた組織は猫2頭のみとなってしまった。以上の理由から、当初計画よりも研究の進行にやや遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓組織および尿中における脂肪酸以外の脂質について解析を検討する。また、新たに犬と猫の腎臓組織を入手し、統計解析可能な検体数の確保に努める。
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Causes of Carryover |
UPLC-MS/MSによる脂肪酸分析の条件設定に時間を要し、脂肪酸以外の脂質分析を実施できなかったことと、コロナ禍のため学会がオンライン開催となり出張旅費を消費しなかったことから、次年度使用額が生じた。
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