2020 Fiscal Year Research-status Report
猫のグルカゴン制御メカニズムの解明と糖尿病治療への応用
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20K15684
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
小田 民美 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (40739158)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 猫 / 糖代謝 / インクレチン / 炭水化物 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリンとグルカゴンの調整に関わる消化管ホルモン「インクレチン」が、猫の糖代謝においてどの程度重要な役割を持つのかを検討した。 脂質に着目して、血糖値、インスリン、グルカゴン、およびインクレチン(GIP、GLP-1)分泌の上昇を引き起こしやすい脂質を選定した。一般的な猫のドライフードによく用いられているラードと大豆油を用いた。その結果、通常食と比べてラードおよび大豆油食は2種類とも脂質に反応しやすいGIPの分泌を上昇させ、特にラードではインスリン分泌を節約しながら血糖値をおおむね正常に維持できることがわかった。また、人では飽和脂肪酸であるラードの方がGIP分泌を促進させ、肥満を助長させることがわかっているが、猫ではどちらの脂質のタイプもGIP、およびGLP-1分泌にそれほど差は認められなかった。 また、炭水化物源として単糖であるグルコース、二糖類であるマルトース、そして多糖類であるコーンスターチを利用して、同様に血糖値、インスリン、その他糖代謝ホルモンを測定した。猫は肉食動物であり炭水化物代謝は人やその他の雑食性動物種よりも苦手であるため、インクレチンの反応性が悪いことが予想されていたが、結果としては、やはりその想定通り、全ての炭水化物源においてインクレチン分泌があまり変化せず、血糖値の明らかな上昇にともなうインスリン分泌亢進が認められた。また、コーンスターチにおいては軟便などの消化器症状も認められたため、猫の炭水化物源として利用するのは難しいことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、いくつかの試薬、検査キットの輸入が安定しなかったため、研究スケジュールを遅延、また一部変更せざるを得なかった。 先に食事負荷試験を実施してそれぞれの栄養素における糖代謝ホルモン分泌の変化についてを検討した。また、研究成果発表に関しても、口頭発表を予定していた学会が開催されなかったため中止とした。そのため、来年度に予定していた論文作成に計画を切り替え、原著論文1本を今年度成果として報告する。
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Strategy for Future Research Activity |
検査キット輸入については安定してきたため、当初の計画である血糖コントロール下におけるインスリン/グルカゴンの変動について検討する。 また、コロナ禍の影響についてが予測ができないため、先に臨床症例の検体採取を随時進めていくこととする。ここでは糖尿病猫の臨床症例を用いて、糖尿病コントロール状態とグルカゴン分泌の関連性について明らかにし、グルカゴンが診断マーカーに有用かを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、いくつかの試薬、検査キットの輸入が安定しなかったため、研究計画を一部変更した。検査キット等の入荷が安定すると見込まれる次年度に実施を予定している。
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