2023 Fiscal Year Research-status Report
猫のグルカゴン制御メカニズムの解明と糖尿病治療への応用
Project/Area Number |
20K15684
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
小田 民美 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (40739158)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 猫 / グルカゴン / 糖尿病 / 血糖降下作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究にて、糖尿病猫のグルカゴン分泌調整異常が確認され、それが血糖コントロールの悪化に関わる可能性が示唆されたため、今年度は、糖尿病猫のグルカゴン制御に関わるインスリン治療以外の治療薬の有用性について検証を行った。 人の経口血糖降下薬として以前から使用されている、SU薬やαグルコシダーゼ阻害薬については、我々の研究チームで実際に有用性を検討しており、いずれも健常猫で有意な血糖降下作用が認められているがインスリン療法の代替となるほどの効果は得られないという結果を過去に報告済みである。そのため、今回はインクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)とSGLT-2阻害薬についての効果を検証した。インクレチン関連薬に関しては、GLP-1の増加によりグルカゴン分泌が抑制されることが人で分かっているが、猫においてはDPP-4阻害薬ではGLP-1濃度を上昇させるが、グルカゴン濃度に対する作用は認められなかった。また、GLP-1受容体作動薬に関しては、血糖降下作用は認められたが、その後に副作用である消化器症状が強く発現してしまい効果の実証には至らなかった。さらに、SGLT-2阻害薬についても、一部の個体にケトン尿の発現が認められたため、効果の実証には至らなかった。特に、SGLT-2阻害薬はその作用機序を考えると、インスリン分泌能が低下しはじめている糖尿病個体や、インスリン分泌能が保持されていても痩せている個体についての使用は、副作用発現のリスクが高くなる可能性が示唆された。 最近の人での知見でも、SGLT-2阻害薬の使用により、グルカゴン分泌はむしろ増加してしまうためにグルカゴン抑制の作用を持つインクレチン関連薬との併用を推奨するという指摘が出ており、肉食動物であり糖新生経路の優位な猫においてはその可能性がさらに高いため、使用については慎重に検討すべきとの考察を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
早期診断マーカーとしてのグルカゴンの有用性については症例数不足により明確な結果が得られず、予定していた計画の一部が完了しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
グルカゴンが診断マーカーに有用かを引き続き症例数を集積して検討することを、次年度も同時進行で実施する。また、今年度報告した結果をもとに、糖尿病猫への安全な使用方法や使用可能例の条件など詳細を明らかにすること、その他のグルカゴン制御に関わる糖尿病治療薬の有用性の検討も引き続き実施予定である。 症例数に関してはコロナ禍の影響により来院患者が全体的に減少していることも影響しており、次年度も予想できない所であるため、近隣病院への協力要請についても進めている。
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Causes of Carryover |
症例数不足によって一部の検査キット購入を延期した。次年度、さらに症例数を集積し改めて追加購入する予定である。 また、グルカゴン治療薬の有用性についての検討で、副作用の発生が複数例報告されたため、改めて適用症例の選定や使用条件に関する再検討を余儀なくされたため、次年度改めて検討する予定である。
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