2020 Fiscal Year Research-status Report
ニワトリ腸管陰窩におけるパネート細胞および腸上皮細胞の生理機能解明
Project/Area Number |
20K15694
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 謙 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30818604)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鶏 / 腸上皮細胞 / パネート細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管上皮細胞の一つであるパネート細胞は、腸管幹細胞の隣に位置し、抗菌や成長因子を分泌することで幹細胞の保護や上皮細胞における増殖・分化の役割を担っている。マウスではパネート細胞に関する機能はよく解明されており、マーカーも多数同定されているが、ニワトリではパネート細胞に関する情報はほとんどない。ところが近年、Wangら(Poult Sci,95:1631-1635. 2016.)により免疫組織学的にパネート細胞の存在が示唆された。また、これまでの申請者の研究から、ニワトリパネート細胞はマウスのパネート細胞と特徴づけるマーカーおよび機能に違いがあることが判明した。本研究では、ニワトリとマウスで共通のパネート細胞マーカーを用いてその遺伝子発現プロファイルを解析し、マウスのプロファイルと比較しながら、ニワトリパネート細胞特有の機能を明らかにすることを目的とする。これまでにニワトリのパネート細胞マーカーはMmp7が適していることを示した。以上を踏まえ、今年度では、マウスとニワトリ両方からMmp7陽性細胞をフローサイトメトリーを用いて回収し、遺伝子発現を調査することで、ニワトリのパネート細胞であるか明らかにすることを計画していた。しかし、新たに導入した倒立蛍光顕微鏡を用いて、再度ニワトリ腸管におけるMmp7陽性細胞の観察を行ったところ、偽陽性の可能性が高い可能性が示唆された。そこで、その他のマーカーの一つであるWnt6と腸上皮細胞マーカーのEpCAMをターゲットとした免疫化学染色を試みたところ、Wnt6は腸上皮細胞ではなく、粘膜固有層での陽性細胞が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べた通り、当初マウスとニワトリ両方からMmp7陽性細胞をフローサイトメトリーを用いて回収し、遺伝子発現を調査することで、ニワトリのパネート細胞であるか明らかにすることを計画していたが、ニワトリ腸管におけるMmp7陽性細胞は偽陽性の可能性が高い可能性が示唆された。その他のパネート細胞マーカーの一つとされているWnt6をターゲットとしたPCRをニワトリの十二指腸、空腸、回腸および直結腸に対して行ったところ、全ての組織で陽性であった。次に、抗Wnt6抗体を用いて免疫化学染色を行ったところ、腸上皮細胞以外での陽性が認められ、Wnt6はニワトリにおけるパネート細胞の探索用マーカーとして利用できないことが判明した。 以上から、マウスとニワトリの腸管では同様の遺伝子発現が認められるものの、その細胞種は大きく異なる可能性が示唆された。同様にマウスで報告されているパネート細胞マーカーは、ニワトリに使用できない可能性が高く、他の分析手法を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況から、ニワトリではマウスのパネート細胞マーカーが適応できない事が判明した。そこで、今後はニワトリ腸上皮細胞をフローサイトメトリーで回収後にシングルセルRNA-seqを行い、腸上皮細胞1つ1つの遺伝子発現パターンを明らかにしていく。現在解析準備を整えており、準備が整い次第シーケンス解析を行う。発現パターン解析後、マウスのパネート細胞と最も類似した発現パターンを有する細胞に対して免疫化学染色を行い、腸管における局在を明らかにする。
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