2021 Fiscal Year Research-status Report
マウスNC系統の特性を利用した脳マラリア発症に必須な遺伝的要因の特定
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20K15698
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 勇輝 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (30778098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | NCマウス / 脳マラリア / ネズミマラリア原虫 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、マウスNC系統にネズミマラリア原虫(P. berghei ANKA株)を感染させると脳マラリアを発症する事を見出した。更に、この系統が従来の脳マラリア感受性系統(B6系統)とは明らかに異なる遺伝的特性を持つ事を発見した。本研究は、脳マラリアモデルとして汎用されてきたB6系統と、それとは異なる特性を有するNC系統を比較して脳マラリアの発症に必須の遺伝子を特定する事を目的とした。 本年度はマイクロアレイ解析を実施した。RNAはB6およびNC系統の脳から採取した。より的確に脳マラリアの発症に普遍的に関与する遺伝子を同定する為、脳マラリア感受性系統として知られるCBA系統を追加し、3系統共通してP. berghei ANKA株感染(脳マラリア発症)に伴って発現が変動する遺伝子を探索した。その結果、3系統共通して2倍以上の発現上昇を示す55種類の遺伝子と2倍以上の発現低下を示す2種類の遺伝子が検出された。これらのうち少なくとも5種類の遺伝子(Igtp, Cxcl10, Gzmb, Tap1, Hmox1)は遺伝子改変マウスの解析により既に脳マラリア発症への関与が明らかとなっており、脳マラリアの発症に必須な因子と考えられた。一方、本研究で抽出した遺伝子の中には脳マラリア発症との関係が不明な遺伝子が含まれており、これら遺伝子は脳マラリア発症に関与する新規遺伝子である可能性が考えられた。現在、同定した遺伝子の発現変動をqRT-PCRで確認すると同時に、脳マラリア発症との関係が不明な遺伝子についてはその機能情報を収集し、脳マラリア発症との関係性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属施設の改修工事に伴ってマウスの飼育スペースが縮小された為、感染実験や脳のRNAサンプルの採取に予定よりも時間を費やし、マイクロアレイ解析の着手に遅延が生じた。本年度は脳マラリア発症に普遍的に関与する候補遺伝子群をマイクロアレイ解析により抽出する事が出来たが、当初予定していた候補遺伝子のノックアウトマウスの作製には至っておらず、全体的に研究の進展が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、本年度に同定した遺伝子のうち脳マラリア発症との関係が不明な遺伝子を中心に以下の解析を実施し、脳マラリア発症に普遍的に関与する遺伝子の特定を試みる。 (1)qRT-PCR解析の結果と遺伝子機能情報に基づいて、脳マラリアの発症との関連が示唆される遺伝子のノックアウトマウスをゲノム編集技術(CRISPR/Cas9システム)により作製する。 (2)作製したノックアウトマウスのP. berghei ANKA株感染時の表現型を解析し、特定した遺伝子の脳マラリア発症への関与を確認する。
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Causes of Carryover |
候補遺伝子のノックアウトマウスの作製に着手出来なかった為、次年度使用額が生じた。本年度の未使用額はノックアウトマウスの作製に係る経費として使用する予定である。翌年度分として請求した助成金は作製したノックアウトマウスの飼育に係る経費や脳マラリアの表現型解析に必要な試薬類・消耗品類の購入に充てる。
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