2022 Fiscal Year Research-status Report
超速老化モデル脊椎動物を用いた個体老化を制御する代謝経路の探索・解析
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20K15701
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿部 耕太 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (10867279)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 老化 / 寿命 / ターコイズキリフィッシュ / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
超短命魚ターコイズキリフィッシュ(通称キリフィッシュ)をモデルとして用い、「脊椎動物の個体老化を制御する代謝経路」の探索、同定を進め、以下の結果を得た。 <計画1>老化速度が異なるキリフィッシュ系統間メタボローム比較から絞り込んだ代謝経路と個体老化の関係解析を引き続き行った。1. 寿命が長い系統で代謝物量が増加していたアミノ酸代謝経路を、人為的に活性化させたキリフィッシュ系統の老化形質解析を進めた。その結果、代謝経路の中心器官である肝臓のみならず、皮膚の幹細胞や筋線維にも抗老化作用が認められた。着目する代謝物量が血中で増加したことから、主に肝臓で作られた代謝物が全身をめぐり作用することで様々な組織の老化を抑制する可能性が考えられた。2. 比較ゲノム解析から見出した、長命系統特徴的な脂質代謝酵素の変異の機能解析を進めた。長命型変異を導入した短命系統キリフィッシュでは、老化抑制効果とともに腸内細菌叢の改善が見られていた。本年度は、抗老化に寄与する細菌を絞り込むために、短命長命系統間の腸内細菌叢比較解析を行った。その結果、特定の代謝特性を持つ細菌が変異導入系統と長命系統で共通して増加することがわかった。以上から長命型変異が腸内環境の制御を介して個体老化を制御することが示唆された。 <計画2>老化速度が異なる系統間で「肝臓置換個体」を作製し、老化制御代謝経路を同定するべく、胚盤胞補完法技術の確立を進めた。しかし、細胞を移植したキリフィッシュ胚を正常に育成することが困難であり、さらなる培養条件の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子機能改変キリフィッシュ系統の解析から、着目する各代謝経路の活性変化が抗老化につながることが確かめられた。さらに、各代謝経路がどの器官、細胞に作用して老化速度を制御するかについての理解が進んだ。しかし、抗老化の具体的な作用因子の特定や、その作用機序の理解が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
作用因子および作用機序に迫るため、代謝経路活性改変キリフィッシュ系統のメタボローム解析、トランスクリプトーム解析を行う。すでに、これら解析に着手しており、測定結果が揃い次第、抗老化物質や下流のシグナル経路を絞り込む。並行して、これまでの解析結果からすでに予想される作用因子(着目する代謝経路中で量が変動する代謝物)については、個体への投与実験を実施し、抗老化作用を検証する。
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Causes of Carryover |
抗老化作用因子および作用機序の解析が未了であり、次年度は、本年度までの解析から絞り込む因子の機能検証を行う。そのために、投与する化合物の費用、および、老化速度への影響の解析(組織形態解析、遺伝子発現解析)にかかる費用として使用する。
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Research Products
(4 results)