2020 Fiscal Year Research-status Report
新生ポリペプチド鎖の空間的な局在化に伴ったmRNA分解機構と生理的意義の解明
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20K15748
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 英治 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 研究員 (10835698)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ribonuclease / 細胞内局在 / RNaseE / 翻訳アレスト / SRP |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトのような真核生物では、細胞の挙動に影響を与えるのはmRNAの量だけではなく、細 胞内のmRNA分子が存在する場所も重要な要素であることが証明されている。一方、原核生物である細菌では、細胞内のmRNAの局在は細胞の挙動に影響を及ぼさないと考えられてきたが、近年の研究により細胞膜へ標的化されるタンパク質をコードするmRNAの多くが膜に局在し、細胞質に局在するmRNAに比べて早く分解される傾向にあることが報告されている。しかしながら、細菌における局在依存的なmRNAの分解の生理的な意義については未だ明確な答えが出ていない。本研究では、アレストペプチドVemPと膜透過促進因子secDF2をコードするオペロン(vemP-secDF2)の細胞内局在に伴ったmRNAの量的制御について着目し、その詳細な分子機構や生理的な重要性について明らかにすることを目的としている。 VemPは、細胞質で合成され膜へ運ばれペリプラズムへ分泌されるが、膜への輸送経路を断つとそのmRNAの安定性が高くなることを見出している。そこで、本年度はvemP-secDF2 mRNAの安定性に関わるつまり、分解を担う因子の探索を主として行った。プラスミドクローンを用いた網羅的な探索やトランスポゾン導入による解析などを行い、vemP-secDF2 mRNAがRNaseE依存的に分解されていることを見出した。RNaseEは、大腸菌において多くのmRNA分解の初手を担う重要なend-ribonucleaseであり、細胞質だけでなく他のribonucleaseと複合体を形成して細胞膜にも局在していることが報告されていることから、vemP-secDF2 mRNAの局在依存的な分解モデルを説明するうえで合理的な因子であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度における主たる達成目標であるmRNAの分解に関わる因子の同定を達成したため。また、得られた因子の細胞膜への局在解析は既に十分に行われていることから、次年度の達成目標である「分解因子の細胞内局在解析」の項目を省略することができ、次年度は予定していた計画を実質的に前倒しして進められる状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
RNaseEによるvemP-secDF2 mRNAの分解機構について大筋では計画通りに行う。 RNaseEは大腸菌において必須遺伝子であるためビブリオ菌でも同じであることが予想される。このため欠失株の作成がうまくいかない可能性があることから、ビブリオ菌においてRNaseEによる分解の生理的意義を検証する際は、RNaseEによって分解されないvemP-secDF2mRNAを用いるなどの工夫が必要である。また、本年度の研究によりRNaseE非依存的なmRNA分子の存在が確認されておりその分子がどのようにして産生されるのかについての分子機構を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により一時研究機関の停止や研究活動の制限、参加を予定していた学会の中止などがあったため。
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