2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞内相分離の誘導制御系開発による相分離形成過程の超解像1分子動態解析
Project/Area Number |
20K15755
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 由馬 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70803245)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生細胞1分子イメージング / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内における液-液相分離は、生体分子を液滴様の微小な凝集体に濃縮し、効率的な生化学反応やタンパク質複合体の形成を促進することで、ストレス応答、シグナル伝達、遺伝子発現制御等の多様な生体機構に関与している。本研究では、生細胞内で人工的に相分離を誘導する簡便な系を確立し、相分離過程の物理化学的性質を1分子イメージングにより定量解析することを目的としている。本年度は、ラパマイシン誘導体(AP21967)によるFKBPとFRBの二量体化を利用した相分離誘導系の構築と、それを用いた蛍光イメージングによる相分離動態の定量解析の確立を行った。液-液相分離の動態が報告されているFUSタンパク質のN末端天然変性領域(IDR)にFKBPとmEGFPを融合したタンパク質と、FRBの繰り返しとmCherryからなる足場タンパク質を作製した。これらをU2OS細胞内で発現させたところ、どちらも均一に分布し、AP21967を添加すると15分以内にマイクロメートルサイズの液滴が核内及び細胞質に確認された。この液滴はヘキサンジオールで可逆的に分散し、IDRの無いFKBPや単体のFRBでは形成されなかったことから、IDR特異的な相分離であることが確認できた。さらに異なるタンパク質由来の6種類のIDRで同様の液滴形成の誘導に成功した。蛍光イメージングやFRAP法を用いて、液滴融合や液滴内部の流動性、液滴外部とのIDR交換を定量する計測・解析系を構築した。IDRと足場の蛍光タンパク質をSNAPタグとmAzamiGreenにそれぞれ変更し、生細胞内でIDRの1分子イメージングを行ったところ、液滴内で拡散運動する個々のIDR分子が観察できた。今後1分子軌跡追跡により相分離に特徴的な動態の定量解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内相分離の誘導系構築において、当初予定していた FET family タンパク質や MED1のIDRに加えてHNRNPA1、AFF4、ENL等のIDRで安定的な液滴形成に成功した。一方、1分子イメージングに用いる足場タンパク質をmEGFPで標識したところ、足場のみで凝集を形成したため観察には使用できなくなった。しかし、蛍光タンパク質を含まない足場やmAzamiGreenに変更したところ凝集は見られなくなったため、予定通り1分子イメージングへの適用が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
構築が完了した誘導系を用いて相分離動態の1分子イメージング定量解析を行う。特に液滴内外の境界領域における分子動態の解析法を確立し、相分離形成特有の1分子動態を定量する。また、IDRのアミノ酸組成を変更した変異体における液滴形成を定量し、相分離に寄与するアミノ酸残基を明らかにする。
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