2020 Fiscal Year Research-status Report
数十個のセルロース合成酵素複合体から1本のセルロース繊維が形成される仕組み
Project/Area Number |
20K15763
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
吉田 徹 日本女子大学, 理学部, 助教 (30724546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バクテリアセルロース / Cryo-EM / トモグラフィー / ミニセル |
Outline of Annual Research Achievements |
バクテリアが産生するセルロース(バクテリアセルロース)の合成と分泌は、内膜上の合成酵素と外膜上の分泌装置を含むタンパク質複合体によって行われる。このターミナルコンプレックス(TC)と呼ばれるタンパク質複合体は細胞膜上に複数配置されており、各TCから分泌されたセルロース鎖が細胞外で集まって最終的に1本の繊維を形成する。しかし、セルロース鎖がどこでどのように束になるのかはよく分かっていない。そこで本研究では、細胞膜上に配置されたTCの構造を解明するために、バクテリアのミニセルを低温電子顕微鏡を用いたトモグラフィー法により観測する。バクテリアには、セルロースを産生することで有名な酢酸菌Komagataeibacter xylinusを用いた。本年度はミニセル作製に向けた下記2つの実験を行った。 (1)酢酸菌のMin遺伝子周辺領域の配列決定。ミニセルを作製する手段の一つとしてMinCDEオペロンの破壊が知られている。MinCDEオペロンを相同組換により抗生物質耐性遺伝子に置き換えるために、MinCDEオペロンを含む領域をクローニングし、塩基配列を決定した。また、相同組換に用いるプラスミドを作製した。 (2)酢酸菌のMreB遺伝子周辺領域の配列決定。より小さなミニセルを作製する手段としてMreBタンパク質への変異導入が知られている。MreB遺伝子への変異導入を相同組換によって行うために、MreB遺伝子を含む領域をクローニングし、塩基配列を決定した。また、相同組換に用いるプラスミドを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酢酸菌のミニセルを作製するためのプラスミドの作製までは終えることが出来たが、酢酸菌へのプラスミドの導入が成功していない。酢酸菌のコンピテントセル作製方法に問題があると考えており、現在コンピテントセルの作製方法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)酢酸菌のミニセル作製。引き続き酢酸菌の形質転換方法を検討する。成功したら、作製したプラスミドを酢酸菌に導入することでミニセルを作製する。ミニセルはまず負染色で確認し、その後Cryo-EMでの撮影を試みる。 (2)大腸菌のミニセル作製。大腸菌W3110株はセルロース合成能を失っている。これは、セルロース合成遺伝子の1つであるBcsQ遺伝子中の1塩基変異が原因である。そこでまず、W3110株のBcsQの1塩基変異を元に戻すことでセルロース合成能を回復させる。その後Red recombinationを用いてMin遺伝子の破壊およびMreB遺伝子への変異導入を行い、ミニセルを作製する。
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Causes of Carryover |
翌年度に超音波破砕機を購入するために本年度の支出を抑えた。
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