2020 Fiscal Year Research-status Report
植物ホルモンによるクロマチン構造とゲノム恒常性の制御機構
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20K15770
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
安喜 史織 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50747946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クロマチン構造 / ヒストン修飾 / 植物ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
動植物を問わず、ゲノム恒常性を維持できないと変異が蓄積し、体細胞および次世代に悪影響をもたらす。特に植物は固着生活を営むので、変動する環境下でいかにゲノム恒常性を維持するかは死活問題である。ゲノムを脅かすものとして、DNA複製エラーなどの内的要因があるが、植物の場合は紫外線や光合成過程で産生される活性酸素、土壌中の重金属、病原菌感染など、様々なストレスがDNA損傷を誘発する。したがって、ゲノムの傷を治すDNA修復マシナリーだけでなく、そもそも傷が入らないようにゲノムを守る仕組みも非常に重要であると考えられるが、その実体は全く解明されておらず、未解明の「問い」として残されたままである。本研究では「植物ホルモンの一種であるオーキシンがクロマチン構造を制御することによりゲノム恒常性を維持する」という仮説を立て、その検証を行うことにより、ホルモンによるゲノム安定性制御という新たな概念を提示することを目標とする。 外的なオーキシン処理はヘテロクロマチン化を促進するが、あるクロマチン制御因子の変異体では、オーキシンによるヘテロクロマチン化の促進が見られなかった。また、その変異体に対して外的にオーキシンを処理しても、野生株で見られるようなDNA損傷の緩和が起こらなかったことから、オーキシンはクロマチン制御因子を介してゲノム恒常性を維持していると考えられる。新たに、クロマチン制御因子と協調的に働くヒストン修飾因子の制御にオーキシンが関与することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説としていたオーキシンによるクロマチン制御因子を介したヘテロクロマチン形成を大まかに示すことができた。また解析を進める中で、新たにクロマチン制御因子と協調的に働くヒストン修飾因子を見出したのは大きな発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
オーキシンがどのようにクロマチン制御因子やヒストン修飾因子の制御を行うのかを分子レベルで明らかにすることで、オーキシンによるヘテロクロマチン形成機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動により、新しい環境でのセットアップに時間を要したためいくつかの解析が実施できず次年度使用が生じた。次年度にこれらの解析を実施する。
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Research Products
(5 results)