2020 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス様粒子を用いたCRISPR-Cas3システム送達技術の開発
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20K15776
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥嵜 雄也 名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (30837208)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / CRISPR-Cas3 / ウイルス様粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム上に大規模な欠損を導入できる新規ゲノム編集技術 CRISPR-Cas3 システムを遺伝子導入が困難な幹細胞や生物個体においても適応可能にするため、小分子依存的にタンパク質をウイルス様粒子内に封入する技術であるNanoMEDIC法を用いて、CRISPR-Cas3システムを構成するCas3タンパク質およびCascadeをウイルス様粒子に封入するための技術を開発した。各Casタンパク質をウイルス様粒子内に封入するため、ウイルス様粒子を構成するコアタンパク質であるHIV-Gagタンパク質に、小分子リガンドを介したヘテロ二量体を形成するために必要であるFKBPドメインを、一方Casタンパク質にはFKBPドメインを付加した発現ベクターを作製した。また、crRNAについてはウイルス様粒子内への取込みを促進させるため、細胞質内でcrRNAが転写されるようにT7 promoterとT7 RNA ポリメラーゼを用いた発現系を構築した。一方、細胞質内で多量のRNAを転写すると細胞内の自然免疫機構がはたらき、ウイルス様粒子を生産させる293細胞が傷害を受けることが考えられた。そこで一本鎖RNAを認識し免疫反応を惹起するRIG-I遺伝子をノックアウトした293細胞を同時に作製した。 次いでこれら材料を用いてCas3もしくはCascade複合体を封入したウイルス様粒子を作製し、293細胞においてB2M遺伝子を対象とした遺伝子破壊効率を評価した。その結果、Cas3封入ウイルス様粒子については数10%程度良好な遺伝子破壊効率を、Cascade複合体封入ウイルス様粒子についても数%の遺伝子破壊効率を得ることができた。 本研究の成果は、遺伝子導入が困難な細胞種へのCRISPR-Cas3システムの適応や、リピートの重複を原因とするハンチントン病や筋強直性筋ジストロフィーへの遺伝子治療への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cas3タンパク質については、ウイルス様粒子内へのタンパク質の封入、細胞への感染および細胞内において高い活性を確認することができた。 また、Cascade複合体についてもウイルス様粒子内へのタンパク質の封入、細胞への感染および細胞内における活性を確認することができた。 ここで、Cascade複合体のウイルス様粒子内への封入効率はCas3タンパク質と比べると低く、今後の改善は必要であるが、本研究における基盤となるCRISPR-Cas3システムをウイルス様粒子内に封入する技術の構築には成功しているため、現状では本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現状Cas3タンパク質については十分な活性のあるウイルス様粒子を作製することができた。一方Cascade複合体についてはCas3と比べて細胞内における活性は低いものであった。活性のあるCascade複合体をウイルス様粒子内に封入するためには、ウイルス様粒子を生産する293細胞において同時にCascade複合体を形成する複数のCasタンパク質とcrRNAを発現させる必要がある。そのため293細胞におけるこれら遺伝子の発現ベクターの遺伝子導入効率と各Casタンパク質およびcrRNAの発現量が相対的に低下し、活性のあるCascade複合体のウイルス様粒子内への封入量が低下したのだと考えられた。これを改善するため今後はCascadeを構成するCasタンパク質群およびcrRNAを少数あるいは単独のベクターから高発現できるように発現ベクターの改良を行う。 改良型ベクターを用いてCascade封入ウイルス様粒子の活性を評価した後、通常の遺伝子導入法ではゲノム編集が困難であるiPS細胞などの幹細胞や、非分裂細胞において作製したウイルス様粒子を用いたゲノム編集効率を評価する。 細胞においてゲノム編集が効率よく行えることを確認できた場合、生物個体における作製したウイルス様粒子を用いたゲノム編集効率についても同様にして評価を行う。
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