2022 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病疾患サブタイプを考慮した新規ドラッグリポジショニング法の開発
Project/Area Number |
20K15778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊地 正隆 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (90722538)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ドラッグリポジショニング / サブタイピング |
Outline of Annual Research Achievements |
現在アルツハイマー病 (AD:Alzheimer's Disease) の新薬開発は難航している。効率的な薬剤探索の手法の一つとして既存の薬剤から新たな薬効を見出し別の疾患へ応用するドラッグリポジショニング (DR:Drug Repositioning) が注目されている。中でも公共の遺伝子発現データを用いたデータ駆動型の様々なDR手法が提案されてきた。しかし特定の研究で得られた遺伝子発現データはしばしば再現性が低く、また遺伝子間の関係性も十分に考慮されていない。そこで本研究では独自に収集し解析した約1万件以上の公共のADオミックスデータによるメタアナリシス統計量とADに特化した生体分子ネットワークデータを駆使する。また 遺伝子がもつ疾患特徴量や薬剤効果量を遺伝子間の”つながり”を介して周辺に伝播させる新手法の開発を行いADに特化した精度の高いDRを目指す。 最終年度である令和4年度はこれまでの解析の結果をまとめ論文執筆に注力した。本プロジェクトでは生体分子ネットワーク情報を考慮したドラッグリポジショニング解析を進めると同時に、病態の多様性に注目したサブタイプ解析も推進してきた。ドラッグリポジショニング解析についてはネットワーク情報を考慮することで疾患との妥当性がある創薬標的候補遺伝子を同定できた他、それらを標的とする既存薬を同定することができた。一方で生体分子ネットワークはスケールフリー構造を有するためハブ遺伝子の影響を大きく受ける。そしてそのような遺伝子はガンに関連することが多いため、ドラッグリポジショニング解析によって推定された既存薬はガン治療薬が多く見つかった。ADは脳における疾患であるため、薬剤が脳血液関門を通過しなければならないというハードルがある。今後は薬物の作用機序や分子メカニズムを考慮した本手法の改善を行うとともに、得られた薬剤の妥当性を実験的に検証する必要がある。
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