2022 Fiscal Year Annual Research Report
HER2阻害薬による抗がん作用と心機能低下作用の統合数理解析
Project/Area Number |
20K15782
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
間木 重行 東邦大学, 医学部, 助教 (90708546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんに対する分子標的抗がん薬である抗HER2抗体トラスツズマブには、心機能低下および心不全を引き起こす副作用が知られている。メカニズムとして心筋細胞のHER2シグナルへの影響が考えられているが、がん細胞で過剰発現したHER2のホモ二量体に特異的に作用するトラスツズマブが、心筋細胞の生理的なHER2シグナルに及ぼす影響は不明であり、学術的問いとして残されている。本研究は、細胞内コンテクストの異なるHER2陽性乳がん細胞および心筋細胞のHER2シグナルを再現可能な数理モデルを構築し、両者を比較することでトラスツズマブによる心機能低下に寄与する分子反応を明らかにすることを目的とする。 令和4年度は、iPS細胞由来心筋細胞のmRNA発現量および3種類の乳がん細胞株の時系列データを元にフィッティングされたHER2シグナル数理モデル(Imoto, et al., Cancers, 2020)を利用して、iPS細胞由来心筋細胞においてNRG1が誘導するリン酸化シグナルが再現可能かを検討した。その結果、がん細胞のデータで最適化された反応パラメタではiPS細胞由来心筋細胞のリン酸化シグナルの挙動を部分的にしか再現することが出来なかった。がん細胞とiPS細胞由来心筋細胞のmRNA発現量を比較すると、iPS細胞由来心筋細胞はHER4、SOS1/2、GAB1、ERK2の発現量が全てのがん細胞に比べて顕しく高い一方で、AKT1/2の発現量は低いことが確認された。以上の結果から、がん細胞モデルのファインチューニングが必要であると判断し、一部の反応パラメタの再探索を行った。 本研究期間において、がん細胞株およびiPS細胞由来心筋細胞のHER2下流リン酸化シグナル動態の実験データおよび実験データを再現する反応パラメタセットを探索し、その相違点を議論するための結果を得た。
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