2021 Fiscal Year Research-status Report
ゼニゴケゲノムDBの拡張開発と仮想化技術を応用した高可搬性ゲノムDBの開発
Project/Area Number |
20K15783
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
谷澤 靖洋 国立遺伝学研究所, 情報研究系, 助教 (90836511)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | データベース / ゲノム / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、苔類ゼニゴケは発生進化生物学においてモデル植物としての利用が広まっている。本研究では、ゼニゴケの正確かつ充実したゲノム情報およびその遺伝子アノテーション情報を研究コミュニティに提供するためのゲノムデータベースMarpolBase (https://marchantia.info) の開発を行っている。また、その主要機能の一部をベースとしコンテナ仮想化技術等を応用することで、コンピュータのプラットフォームや実行環境によらず汎用的なゲノムデータベースを簡便に構築できる「高可搬型ゲノムデータベース」の開発を行う。 令和3年度は、前年度に新規決定された雌標準系統Takaragaike-2 (Tak-2) の雌性染色体配列情報を用いた半数体生物における性決定機構解明の共同研究に参画し、その成果はCurrent Biology誌に論文発表された。さらに、発現量データベースの開発は京都大学との共同研究により進め、これまでに主要な機能の開発は終了し論文投稿準備中となっている。 また、データベースの機能の一部を応用したイエネコゲノムデータベース (Cats’ I, https://cat.annotation.jp) および珪藻ゲノムデータベース (非公開) の開発を行なっている。前者においては現在までにbioRxivでプレプリントが公開され、今後、査読付き論文誌への投稿が予定されている。後者についてはデータベースで提供されたゲノムデータを利用して行われた研究成果がScience Advances誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度では前年度に決定された雌標準系統 Tak-2 ゲノムの遺伝子アノテーションを完成させた。現在、共同研究者にゲノムデータを提供し解析を進めており、一般にも公開予定である。発現量データベースは京都大学の川村昇吾氏を中心に開発が進められ、これまでに主要な機能を完成させMarpolBase Expression(https://marchantia.info/mbex/)として公開を行なった。また、MarpolBase の一部として運営されている遺伝子名データベースNomenclature DBを拡充し、これまでの登録件数の約2倍にあたる約2,400件のマニュアルキュレーションされた遺伝子名が新たに追加された。この情報はMarpolBase Expressionに提供され、遺伝子名を用いた検索機能や文献情報への参照機能に役立っている。 また、データベースの機能の一部を応用したイエネコおよび珪藻ゲノムデータベースの開発を行っている。前者においては査読付き論文誌への投稿を行うため、遺伝子アノテーションを更新し正式版として公開した。後者においては、これまでに非光合成珪藻Nitzschia putridaの新規ゲノム解析および遺伝子アノテーションを行い、その結果をデータベースとして共同研究者に提供を行ってきた。データベースから提供されるゲノム情報に基づき、本種が光合成を止めた後に従属栄養性へとシフトしてきた進化背景が明らかになり、その成果はScience Advances誌に掲載された(京都大学神川龍馬氏らとの共同研究)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、多数のゼニゴケ株を用いたリシークエンス解析が進められており、得られた変異情報等を可視化するためのゲノムブラウザーを搭載する計画がある。また、発現データベースについてはゼニゴケデータベース本体との統合化を進めていく。これらの、機能強化が終わった段階でMarpolBase本体の論文化を目指す。 また、イエネコゲノム解析に関しては、査読付き論文誌への投稿準備が進められており共著者として参加予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの流行により予定していた海外出張がキャンセルになった。
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