2020 Fiscal Year Research-status Report
老化細胞特異的に発現する膜タンパク質を標的とした老化細胞除去法の開発
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20K15791
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長野 太輝 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助手 (00759988)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞老化 / マクロピノサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題の標的遺伝子であるLymphocyte Antigen 6 family member D (LY6D)について主に下記2点の解析を行った。 1. LY6Dの相互作用因子の探索 LY6Dは細胞膜のラフト上でSrcやRasといったシグナル伝達因子と会合することでエンドサイトーシスの一種であるマクロピノサイトーシスを誘導することを見出しているが、この際に細胞外に存在するLY6Dから細胞内のSrcにシグナルを伝達する膜タンパク質が存在することが予想される。そこでLY6Dの過剰発現後に免疫沈降を行い、共沈物をSDS-PAGEで展開後、銀染色で得られたバンドを質量分析に供することで、LY6Dの相互作用因子の探索を行った。その結果、30種類の候補因子が得られた。その中から1) 細胞膜に局在することおよび2) エンドサイトーシスを含む膜動態に関わるもの、の両方を満たすものとしてIntegrinβ1に着目した。LY6D過剰発現下でIntegrinβ1の中和抗体処理あるいはsiRNAによるノックダウンを行った結果、LY6D誘導性のマクロピノサイトーシスが抑制された。これらの結果からLY6Dは細胞膜上でIntegrinβ1と相互作用することで細胞内にシグナルを伝達し、マクロピノサイトーシスを誘導していることが示唆された。 2. 老化細胞の細胞死誘導 マクロピノサイトーシスを阻害することで老化細胞に細胞死が誘導されることを見出している。この知見を用いて正常細胞と老化細胞との共培養時にマクロピノサイトーシス阻害により老化細胞選択的に細胞死を誘導する系の確立を目指している。本年度は共培養系において老化細胞と正常細胞を区別するための蛍光染色法を確立した。本結果を用いて次年度はマクロピノサイトーシスを阻害した際の細胞死をタイムラプス撮影により観察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中の実験計画は1) LY6Dの相互作用因子の探索および2) 老化細胞と正常細胞の共培養系の確立であった。1)については予定通り、質量分析を用いた網羅的解析を行い、相互作用因子としてIntegrinβ1を同定した。Integrinβ1の機能阻害を行った結果、LY6D誘導性のマクロピノサイトーシスの抑制が見られたことから、Integrinβ1が本経路に関わることが明らかとなり当初の見通し以上に研究が進展したと言える。今後はIntegrinβ1の下流因子であるFAKの阻害実験なども行い、シグナル伝達経路をより詳細に解析する予定である。また、2)については、老化細胞と正常細胞の共培養実験系を構築するため、それぞれの細胞を異なる蛍光色素で染色する手法を確立したため、当初の予定通りに研究が進展したと言える。今後は蛍光顕微鏡でのタイムラプス撮影を行い、老化細胞と正常細胞での細胞死誘導の差異を解析する予定である。以上より、現在までの進捗状況は研究目的を達成するために充分なペースで進展していることから(2)おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は引き続きLY6Dがマクロピノサイトーシスを引き起こすシグナル伝達経路を解析していく。LY6Dの下流因子の候補としてIntegrinβ1が得られていることから、本因子によってリン酸化され活性化されるキナーゼであるFAKに着目し、阻害剤やsiRNAによるノックダウン実験によりマクロピノサイトーシスとの関連を明らかにすることで、LY6Dによるマクロピノサイトーシス誘導の分子メカニズムの全体像を解明する。また、老化細胞に細胞死を誘導する実験では、正常細胞と老化細胞の共培養系においてLY6Dのノックダウンおよびマクロピノサイトーシス阻害剤存在下での細胞のタイムラプス観察を行うことで、マクロピノサイトーシス阻害により老化細胞選択的に細胞死を誘導できることを明らかにしていく。また、シグナル伝達経路の解析でIntegrinβ1やFAKとマクロピノサイトーシスとの関連が明らかになれば、それら因子の機能阻害を行った際の細胞死の観察も行い、複数の標的を用いた老化細胞の細胞死誘導法の確立を目指す。上記までの実験から得られた研究成果を学術論文や学会発表により公表する。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により学会の開催がオンラインに変更されたことから、予定していた旅費の支出が減少した。また、物品の購入においても世界的な物流の混乱により購入を延期したものがあること等の理由から来年度使用額が生じた。今年度は現地で開催される学会に参加予定であるため旅費として使用予定である。また、物品購入についても、延期されていた物品を順次購入予定であるため物品費としても使用する予定である。
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Research Products
(2 results)