2020 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアタンパク質輸送における校正機構の解明
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20K15794
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 俊介 九州大学, 農学研究院, 助教 (70704295)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / Msp1 / タンパク質輸送 / 配送のやり直し / テイルアンカー型タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ミトコンドリア外膜に存在するAAA-ATPase Msp1を介した誤配送タンパク質の配送やり直し(校正)の分子基盤を解明することを目的とした.本年度はミトコンドリア外膜に誤配送されたテイルアンカー型(TA)タンパク質が, Msp1によって外膜から引き抜かれた後に小胞体(ER)に移動する分子機構を解析した.今回,我々は誤配送TAタンパク質がMsp1依存的にミトコンドリアからERに移動する様子をリアルタイムで捉えるために,タイムラプス解析を行った.Msp1とMsp1のモデル基質Pex15Δ30(ペルオキシソームに局在するTAタンパク質Pex15のC末30アミノ酸を欠失した変異体)を2種類の異なる薬剤誘導型プロモーターから発現させ,外膜に誤配送されたPex15Δ30がMsp1依存的にERに移動することを示した.次に, Msp1から引き抜かれたPex15Δ30がGET(Guided Entry of Tail-Anchored proteins)経路を介してERに移動することを見出した. Msp1がミトコンドリアのタンパク質輸送に障害が起きた時に生じる前駆体を基質にするのかを検証するために,ミトコンドリア内膜に移行するモデル基質(Cytochrome b2-DHFR融合タンパク質; b2-DHFR)をガラクトース誘導型プロモーターで過剰発現する酵母株(b2-DHFR発現酵母)を作製し,細胞内にミトコンドリアタンパク質前駆体を蓄積させる実験系を構築した.b2-DHFR発現酵母を用いて現在までに, ミトコンドリア外膜に蓄積した前駆体がMsp1によって, クリアランスされることを見出し, そのような前駆体はプロテアソーム分解経路に回るだけではなく, ミトコンドリアに取り込まれる状態を保っていることがわかってきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,ミトコンドリア外膜に誤配送されたTAタンパク質がMsp1依存的にERに移動することを明らかにしていたが, どのようにしてERに移動するのか, その分子機構は不明であった(Matsumoto et al., Mol. Cell, 2019).近年我々は, Msp1によってサイトゾルに引き抜かれた誤配送TAタンパク質がGET経路を介してERに移動すること, b2-DHFRの過剰発現によって, Mdj1前駆体が外膜に蓄積し, Msp1依存的にクリアランスされることを見出した.以上の点において, 研究の進展が見られた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにb2-DHFRを過剰発現することによって,Mdj1前駆体がMsp1の基質としてマトリクスへの移行やり直しが促進されることを見出しているが,他の基質前駆体は見つかっていない.そこで,Msp1の基質となる前駆体を網羅的に探索するために,b2-DHFR過剰発現時にMsp1と結合する前駆体をSILAC法による質量分析によって候補の絞り込みを行う.Msp1のAAAドメインに保存されたグルタミン酸の変異体(E193Q)は,安定的なヘキサマー構造を作り,モデル基質Pex15Δ30をトラップすることがわかっている.E193Q変異体と野生型Msp1を発現させた酵母をそれぞれ質量の異なる安定同位体でラベルし,両者の培養液を混合してから,ミトコンドリア画分を単離する.界面活性剤で可溶化した後,Msp1でPull-downした時に結合するタンパク質を質量分析で解析する.E193Q変異体(Heavy)と野生型(Light)Msp1とそれぞれ結合したタンパク質のシグナルをHeavy/Lightの量比が高くなるタンパク質で同定することで,候補基質の絞りこみを行う.
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Causes of Carryover |
申請者は, 2020年度8月に京都産業大学から九州大学に異動したために, 実験系のセットアップ等で研究遂行のスケジュールに若干の遅れが出ため, 予算執行の変更を行った.
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