2020 Fiscal Year Research-status Report
線虫の精子特異的なタンパク質のアルギニンメチル化による制御機構の解析
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20K15799
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田島 達也 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 研究員 (80845058)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 線虫 / 精子 / アルギニンメチル化 / 塩基性タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫(Caenorhabditis elegans)精子特異的な塩基性タンパク質である3種類のSPCH(SPCH-1、SPCH-2、SPCH-3)は哺乳類精子のプロタミン様因子と考えられているが、実際にプロタミンの機能を持つかどうかは明らかになっていない。また、生殖機能がアルギニンメチル化によって制御されているかどうかも不明な点が多い。本研究では、「線虫の配偶子形成や受精におけるSPCHの機能解析およびSPCHのアルギニンメチル化修飾の生物学的意義の解析」について組換えタンパク質や線虫を用いてin vitro、in vivoでのアプローチをする。令和2年度の研究実績は以下のとおりである。 1.in vitroメチル化実験の結果、線虫PRMT-1はSPCH-2とSPCH-3をメチル化した。そこで、配列アライメントからSPCH-1には存在せずSPCH-2とSPCH-3に共通して存在する43位アルギニン(R43)をリジンに置換したところ、PRMT-1によるメチル化が消失したことから、SPCH-2、SPCH-3のR43がアルギニンメチル化部位と特定された。 2.spch-1、spch-2、spch-3各変異体を用いた表現型解析の結果、spch-2変異体の産仔数が野生型より顕著に低下していたことから、spch-2は線虫の生殖機能に大きく寄与していることが示唆された。 3.ウサギ網状赤血球ライセートを用いて、in vitroで発現させたSPCH組換えタンパク質をDNaseまたはRNaseで処理し、ウエスタンブロットで検出したところ、RNase処理したSPCHは未処理およびDNase処理よりバンドがシフトダウンしたことから、SPCHはRNA結合活性を持つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPCHのメチル化については、PRMT-1によるSPCH-2およびSPCH-3のアルギニンメチル化部位の同定は計画通りに進んでいる。また、DNAおよびRNA結合性については、当初の予想とは異なる結果が得られているものの、仮説を修正しながら検証を続けている。 in vitroの結果を踏まえ、in vivoにおいてSPCH-2および SPCH-3のR43のメチル化の生物学的意義を調べるために、CRISPR/Cas9システムによるspch-2 /spch-3 R43K変異体作製に着手した。2種類のSPCHは相同性が非常に高いため、期待される相同組換えが起こりにくく難航したが、最近spch-2/spch-3 R43K変異体の樹立に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroのアプローチでは、SPCHのDNAおよびRNA結合性を詳細に調べるため、ビオチン化したDNAまたはRNA断片をアビジンビーズに固定し、メチル化させた組換えSPCHを加えて、非メチル化SPCHと結合活性を比較する。 in vivoのアプローチでは、spch-2やprmt-1変異体についてヒストンやSPCHの存在量をウエスタンブロットで解析する。また、CRISPR/Cas9システムで作製したspch-2/spch-3 R43K変異体を用いて、産仔数やin vitro精子形成等の表現型解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度は新型コロナウイルスの影響により、参加した学会が全てオンライン形式で開催されたため遠征時に発生する旅費の支出がゼロとなり、予定していた所要額に達しなかった。令和3年度も同様の状況になる可能性が充分に考えられ、その場合は試薬や消耗品等を購入する予定である。
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