2021 Fiscal Year Research-status Report
EPFL2ペプチドによる新規パターン形成メカニズムの解明
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20K15807
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
爲重 才覚 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (20725006)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物発生学 / オーキシン / 形態形成 / 葉 / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではEPFL2ペプチドの機能とオーキシンパターン制御との関連に注目して、形態形成のパターンが生じる原理の解明を目指している。数理シミュレーションによって、EPFL2がどのように葉の鋸歯形成パターンに影響を与えるかを説明するモデルを構築することも計画の一部であった。2020年度までに構築していた python 言語で記述したプログラムを拡張し、2因子間の拡散不安定性によるチューリングパターンが生じる場合、そこにEPFL2を仮定した第三の因子を導入することでチューリングパターンが変化しうることを見出した。これはオーキシンのパターンに、EPFL2が影響を与えるメカニズムを説明できる可能性があり、現在は研究協力者を得て分子的実態をより詳しく模倣したモデルの構築に取り組んでいる。 2020年度までに、EPFLペプチドの活性評価に利用可能な顕微鏡システムの基礎を研究協力者とともに構築し、2021年度はそのベンチマーク評価を進め、論文を出版した。さらにEPFLペプチドの人為的発現の実験系構築に向けて、ペプチド発現を定量的に可視化するベクターのプロトタイプを開発した。他に、単細胞レベルでEPFL2等の遺伝子発現を操作する実験系を構築できれば、より詳細な機能解析が可能になり本研究を推進できるため、IR-LEGOと呼ばれる顕微鏡システムを用いた実験系の構築を研究協力者と共に進め、良好な結果を得た。 またepfl2 pin1 変異体における葉の鋸歯形態を調査しpin1変異体とは異なることを見出し、あらためてEPFL2ペプチドがPIN1非依存的に機能することを支持する結果を得た。この結果をさらに定量化し再現性を確認するための観察を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EPFL2ペプチドの機能検証は、実験による観察データの蓄積という点では、さらに追加で収集する必要がある状況に留まり、本プロジェクトの期間延長を行った。一方、数理シミュレーションによる説明モデルの構築は大きく進展し、次の発展的な段階への道筋を示すことができた。またペプチド機能を評価するための顕微鏡システムや遺伝子発現操作システム、ベクターシステムなど、技術的な開発によって本プロジェクトを前進すると共に、その一部を当初想定していなかった重要な成果として論文発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はEPFL2ペプチドの下流で働く関連遺伝子の解析を行い、またepfl2変異体とpin1変異体および二重変異体の観察データをさらに蓄積する。ペプチド発現を定量的に可視化するベクターの開発を進め、本研究でのEPFL2の機能解析を進めると共に、多様なペプチドの研究に利用可能なものを構築する。また数理シミュレーションのモデルを研究協力者と共に発展させ、オーキシンの極性輸送によるパターン形成とEPFL2によるオーキシンのパターン形成機構の関係性について深掘りして解析する。他に単細胞レベルでEPFL2等の遺伝子発現を操作する実験系の開発と論文発表を研究協力者と共に進める。
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Causes of Carryover |
当初の想定よりも日程が合わずに学会参加数が少なくなったことや所属機関からの支援により、予算に余裕が生じた一方で、実験観察データの収集規模を拡大する必要が生じたため、次年度に引き続きデータ収集のための消耗品費などの物品費が必要となった。
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Research Products
(3 results)