2022 Fiscal Year Annual Research Report
母性遺伝を保障する葉緑体DNAの「組換え抑制」と「選択的複製」の解析
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20K15812
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小林 優介 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 助教 (20800692)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 葉緑体核様体 / 母性遺伝 / 相同組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
栄養細胞においてRECAは葉緑体DNAの相同組換え・ゲノムの安定性に関わる(Odahara et al., Plant Physiology 2016; Kobayashi et al., Plant Physiology 2020)。RECAは接合子において発現が顕著に増加するが、その意義は不明であった。そこでRECAと、その他の葉緑体ゲノムの維持に関わることが考えられる遺伝子との多重変異体において母性遺伝が攪乱されるか調べた。変異体の葉緑体で父性遺伝が起きるか検証するために、雄の葉緑体DNAにaadA(スぺクチノマイシン耐性)遺伝子を導入し、変異体同士で交配を行い、aadAが次世代に遺伝するかどうか調べた。変異体同士を交配すると、スぺクチノマイシンに耐性を持つ子孫が高頻度で現れた。しかし、PCRによる解析の結果、薬剤耐性をもつ株からはaadA遺伝子は検出されなかった。スぺクチノマイシンはバクテリア型の翻訳装置を阻害する。つまり、これらの耐性は、aadAを父性遺伝で獲得したからではなく、葉緑体DNAのリボソーム遺伝子が塩基置換などの変異を蓄積することで誕生したと考えられる。この結果は、(1)RECAなどのDNA組換え因子群の発現亢進は母性遺伝に直接は関与しない。(2)栄養増殖期より有性生殖過程では葉緑体ゲノムが変異を蓄積させやすく、(3)組換え因子群の発現上昇は、葉緑体ゲノムを次世代に安定的に引き渡すために重要であることを示唆する。
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