2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on the molecular mechanisms of the heterophylly of an aquatic plant Callitriche palustris
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20K15816
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古賀 皓之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30783865)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 異形葉性 / ミズハコベ / アワゴケ属 / 新規ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物はしばしば、環境によって異なる形の葉を作る能力、異形葉性を備えている。とくに水辺に育成する被子植物(水草)には、陸生時と沈水時とで著しく異なる形の葉を作る種が数多く知られているが、そのメカニズムはほとんどわかっていない。そこで本研究では水草の葉の示す顕著な 表現型可塑性、異形葉性の詳細な分子機構を解明することを目的とし、オオバコ科の水草、ミズハコベをモデルとしてその解析をすすめた。新型コロナ感染症拡大の影響で、研究室での実験が困難な状況であったので、バイオインフォマティクス系の解析を中心に研究を進めた。ミズハコベのドラフトゲノム解析では、ロングリードシーケンサーの出力を追加することで、連続性の高いゲノム配列を得ることができた。今後、遺伝子配列予測をすすめ、ゲノム情報の整備を進めていく。一方、異形葉に関わる各表現型の素因子解析として、気孔減少に関わる遺伝子群の解析を進めた。低濃度のABA添加下では、水中でつくられる葉の形のまま、気孔数が増えることがわかっている。その系を用いて、RNAseqによって気孔の制御に関わる遺伝子の絞り込みを試みた。しかし、当初設定した反復数では表現型の変化に対して検出力が低すぎたことが示唆されたため、反復数を増やし検出力を挙げた上での再解析を計画している。 成果発表として、ミズハコベの異形葉性と植物ホルモンの関係を詳しく調べ、さらに比較発現解析により、異形葉性に重要な遺伝子群を絞り込んだ結果を、国際誌へ投稿した。また、ミズハコベとその近縁種間で見つかった気孔の発生機構の違いについて、その違いを生み出す分子的な仕組みも含めた解析結果を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来計画していたいくつかの実験が困難であったため、それらを進めずに特に情報解析系の計画を先行して進めた。そのため、ゲノム解析等の項目は大きく進んだ一方で、実験を伴う植物ホルモンの下流因子の解析や、異形葉性の表現型素因子解析を十分にすすめることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ミズハコベの異形葉性には植物ホルモンのアブシシン酸、エチレン、ジベレリンが深く関わっていることがわかっている。これらの植物ホルモン下流の遺伝子ネットワークを解析するため、植物ホルモンまたは阻害剤の添加のもとでの遺伝子発現解析をすすめる。また形質転換によって、よく保存されたホルモンシグナル伝達因子(EIN3、DELLA、SnRK2など)の機能阻害を試み、異形葉性に関 わる遺伝子がCanonicalなホルモンシグナルの制御下にあるのかどうかも検討する。また、異形葉の表現型の素因子解析として、気孔の制御機構の解析をすすめるとともに、 化学物質による異所的維管束誘導系を利用して、葉脈形成に関わる遺伝子群の特定もすすめる。項目1で得られたデータと合わせて、これらの遺伝子 群の植物のホルモンによる制御を明らかにし、異形葉性制御の分子的概要を解明する。これまでRNAseqはde novo transcriptomeへのマッピングによって定量を行なっていたが、決定したゲノム配列へのマッピングを行なうことで、より正確な解析結果を得ることが期待できる。
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Research Products
(13 results)