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2021 Fiscal Year Research-status Report

色素体核様体の膜アンカーポイントが司る核様体構造と色素体分化の制御

Research Project

Project/Area Number 20K15819
Research InstitutionHirosaki University

Principal Investigator

藤井 祥  弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (20867717)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords色素体分化 / 核様体 / 膜アンカータンパク質 / 葉緑体 / クロマチン免疫沈降シーケンス
Outline of Annual Research Achievements

植物の色素体は,器官や環境に応じて柔軟に分化する。緑化時にみられる未分化な色素体から葉緑体への分化は,チラコイド膜の形成や大規模な遺伝子発現変動を含むダイナミックな過程である。色素体のゲノムDNAは,多数のタンパク質とともに「核様体」という複合体を形成し,膜にアンカーされている。葉緑体分化時には核様体がチラコイド膜上に分散するが,その分子機構及び生理学的機能には未解明の部分が多く残されている。本研究では,色素体核様体の膜アンカーポイントのダイナミクスとその生理学的意義の解明を目指している。
2020年度までに,色素体核様体の膜アンカータンパク質の一つであるMFP1が,葉緑体分化時の核様体の分散と表面積の拡大に必須であることを示した。2021年度は,MFP1による核様体の膜アンカーの生理学的意義を突き止めるため,MFP1タンパク質の欠損が色素体遺伝子の転写に与える影響を詳しく解析した。色素体ゲノム中の光合成関連遺伝子や多くのtRNA遺伝子は,色素体コードのRNAポリメラーゼ(PEP)によって転写される。報告者らが最近確立した,PEPのサブユニットであるRpoBに対する全ゲノムクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)法を用いて,シロイヌナズナの野生株とmfp1ノックアウト変異体においてPEPのDNA結合領域を網羅的に解析した。強光照射時によるPEP-DNA結合強度の変化を調べたところ,野生株では一部の色素体遺伝子座において強光照射によるPEP結合量が増加していた。一方mfp1変異体では強光によるPEP結合量の変化がほとんど検出されなかった。またこれらの遺伝子座では,mfp1の欠損によって強光照射後の転写産物量が低下した。以上のことから,MFP1は核様体の表面積を広げることで色素体遺伝子のストレス環境下での転写誘導を可能にしていると考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

芽生えに対する直接的なクロマチン免疫沈降法の確立により,色素体RNAポリメラーゼ(PEP)とDNAの結合パターンを解析できるようになったことは重要な進展である。また,ゲノムワイドなPEPの結合パターンを統計的に分析することで,これまで厳密な解析が難しかった色素体における転写の変化を捉えられた点も非常に重要である。上記の研究成果は,これまで関係性が未解明であった色素体核様体の構造と生理学的機能との間に重要な関連があることを示している。なお,これらの研究成果は論文として国際誌上で発表することを目指し,原稿の準備を進めている。
今後の研究に使用する形質転換ラインや変異体のスクリーニングも進めており,2022年度の解析に供する予定である。以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると考えている。

Strategy for Future Research Activity

今後は,MFP1が核様体の形態と転写活性を制御する分子機構を突き止めるため,MFP1をバイトとしたChIP-seq解析や,タンパク質間相互作用解析を行う。特に,RNAポリメラーゼ複合体の構成因子であるRpoタンパク質やシグマ転写因子との関係を重点的に解析する。他の核様体膜アンカータンパク質であるTCP34,PEND,NIPなどとの機能的・構造的な相互作用についても解析を進める。
膜上での核様体の分配に関しては,チラコイド膜脂質の合成が重要な役割を果たしていることが示されている。また,報告者らの解析によりチラコイド膜脂質の1種であるホスファチジルグリセロール(PG)を欠損した変異体では,PEPの活性が特異的に低下することが示唆されている。このことから,PGもしくは特定のチラコイド膜脂質がPEPの機能に深く関与していることが予想される。この仮説を検証するため,各種のチラコイド膜脂質を欠損させた変異体におけるPEPのDNA結合パターンを比較することで,色素体遺伝子の発現とチラコイド膜形成との関係を解き明かす。
得られた成果については,随時国内外の学会で発表するとともに,国際誌にも投稿する予定である。

  • Research Products

    (6 results)

All 2022 2021 Other

All Int'l Joint Research (2 results) Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Int'l Joint Research] ミシガン大学(米国)

    • Country Name
      U.S.A.
    • Counterpart Institution
      ミシガン大学
  • [Int'l Joint Research] アカデミアシニカ(台湾)

    • Country Name
      その他の国・地域
    • Counterpart Institution
      アカデミアシニカ
  • [Journal Article] Impacts of phosphatidylglycerol on plastid gene expression and light induction of nuclear photosynthetic genes2022

    • Author(s)
      Fujii Sho、Kobayashi Koichi、Lin Ying-Chen、Liu Yu-chi、Nakamura Yuki、Wada Hajime
    • Journal Title

      Journal of Experimental Botany

      Volume: - Pages: -

    • DOI

      10.1093/jxb/erac034

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Journal Article] High-resolution map of plastid encoded polymerase binding patterns demonstrates a major role of transcription in chloroplast gene expression2022

    • Author(s)
      Palomar V. Miguel、Jaksich Sarah、Fujii Sho、Kucinski Jan、Wierzbicki Andrzej T.
    • Journal Title

      bioRxiv

      Volume: - Pages: -

    • DOI

      10.1101/2022.01.18.476797

    • Open Access / Int'l Joint Research
  • [Presentation] 葉緑体分化時に核様体を広げる膜アンカー因子MFP12021

    • Author(s)
      藤井祥,鹿内利治,西村芳樹
    • Organizer
      第11回日本光合成学会年会
  • [Presentation] 葉緑体分化時の遺伝子発現を支える核様体の膜アンカー因子MFP12021

    • Author(s)
      藤井祥,鹿内利治,西村芳樹
    • Organizer
      日本植物学会第86回大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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