2023 Fiscal Year Annual Research Report
色素体核様体の膜アンカーポイントが司る核様体構造と色素体分化の制御
Project/Area Number |
20K15819
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
藤井 祥 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (20867717)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 色素体分化 / 核様体 / 膜アンカータンパク質 / 転写制御 / クロマチン免疫沈降シーケンス / 膜脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,葉緑体核様体の膜アンカーポイントの機能ならびに構成因子の探索と,葉緑体チラコイド膜の形成が膜アンカーポイントの形成や核様体の機能に与える影響について研究を行った。膜アンカーポイントの機能と構成因子に関しては,膜局在性のDNA結合タンパク質であるMFP1に着目して研究を進めた。MFP1を標的とする共免疫沈降解析から,転写・翻訳に関わるタンパク質が複数MFP1と結合する可能性を見出した。MFP1が遺伝子発現に関わるタンパク質を膜上に集約して核様体の膜アンカーポイントを形成し,遺伝子発現制御に関わっているのではないかと考えられる。チラコイド膜と核様体の機能の関係に関しては,チラコイド膜を構成するガラクト脂質およびリン脂質PGの合成が,葉緑体遺伝子発現に及ぼす影響を解析し,膜脂質の合成が,葉緑体分化時の転写と翻訳の活性化に必要であることを見出した。さらに,PG合成が膜アンカー因子MFP1の発現にも関与していることを突き止めた。以上の成果は,複数の学会で報告しており,膜脂質と色素体遺伝子発現の関係については2024年4月に論文として公表した。MFP1の機能に関しても,2024年度中の論文化を目指している。 研究期間全体では,葉緑体分化時に,MFP1が核様体の分散と表面積の拡大に必要であることを見出した。また,MFP1が強光ストレス条件下における葉緑体の転写活性化に寄与することを解明した。MFP1は,チラコイド上に膜上にDNAを繋留するとともに,遺伝子発現に関わるタンパク質を集積し,ストレス環境下での効率的な遺伝子発現を可能にするのではないかと考えられる。さらに,色素体膜脂質の合成と,それに伴うチラコイド膜の形成が,葉緑体分化時の遺伝子発現に必要であることを見出した。核様体の膜アンカーポイントを介した膜形成と遺伝子発現の協調的な制御機構が存在する可能性が示唆される。
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