2020 Fiscal Year Research-status Report
Tissue size control with synthetic cell-cell signaling
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20K15828
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
戸田 聡 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 助教 (20738835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 組織恒常性 / 細胞間コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞どうしが互いの増殖を制御する細胞間コミュニケーションを人工的に構築するボトムアップアプローチにより、生体組織が一定のサイズを維持する組織恒常性を獲得する基本原理を明らかにすることを目的とする。私達はこれまで、細胞から分泌された任意のタンパク質を認識して、指定通りの遺伝子発現を誘導することができる人工受容体システムを開発した。令和2年度は、このシステムを用いて、緑色蛍光タンパク質GFPを細胞間シグナル分子とする人工的な細胞間コミュニケーションを構築した。GFPを分泌する細胞およびGFPを受容する細胞のシグナルのやり取りにおいて、パラメータ探索やフィードバック回路構築を行うことで、細胞間シグナルの強度や伝達距離、伝播や安定性などのシグナル動態を自在に制御することに成功した。さらに、上記システムを用いて薬剤耐性遺伝子発現を制御することにより、細胞増殖を阻害する薬剤の存在下において、細胞間コミュニケーション依存的な細胞生存・増殖を誘導することに成功した。これにより、in vitroにおいて細胞が互いの増殖を促進・阻害する細胞間コミュニケーションを新たに構築することが可能となった。来年度は、細胞の生存・増殖を誘導する人工的な細胞間コミュニケーションにおいてフィードバック回路を構築し、細胞集団がどのような条件下で頑強に組織サイズを維持することができるか、あるいは、腫瘍のように組織サイズ制御が破綻するかを解明することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、細胞が互いの増殖を促進・阻害する細胞間コミュニケーションを人工的に構築する手法を開発したことに加え、細胞から分泌されたシグナル分子が多細胞パターンを形成する原理を解析し、細胞分化パターンのデザインを可能にした本研究成果を論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞間コミュニケーションを操作する技術を応用して、細胞の増殖を促進する正のフィードバック回路、および、増殖シグナルを抑制する負のフィードバック回路を形成することにより、組織サイズを一定に保持することが可能な細胞間シグナル回路の構築を目指す。まず、GFPを細胞間シグナル分子として用いた細胞間コミュニケーションにおいて、GFPを受容した細胞が薬剤耐性遺伝子の発現、および、さらなるGFPの産生を誘導する正のフィードバック回路を構築することで、不死化細胞株のように細胞が増殖して拡大を続けるスフェロイドの作製を目指す。そこに、GFPを認識して抗GFP阻害抗体を分泌することで負のフィードバック回路をもつ制御細胞を導入する。増殖を促進する正のフィードバック細胞と増殖を抑制する負のフィードバック細胞からなる2細胞種間シグナル回路において、GFPのシグナル伝達距離や両細胞種の数/比、負のフィードバック回路の強度などのパラメータを操作解析することで、一定サイズの多細胞スフェロイドを形成するための十分条件を同定する。また、パラメータ探索において、様々な異なる条件下で組織サイズがどのように変化するのか、つまり、組織が持つ頑強性を解析し、これまでに提唱されている組織サイズ制御モデルや腫瘍形成時の恒常性破綻のモデルとの共通原理を模索する。
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Causes of Carryover |
研究計画の軽微な変更により、必要機器の購入を一部先送りしたため次年度使用額が生じた。次年度に当初の計画と同様の必要機器を購入する。
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