2023 Fiscal Year Annual Research Report
卵生―胎生の繁殖戦略によって逆転するエストロゲンの代謝制御
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20K15835
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山岸 弦記 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 研究員 (80845868)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 糖新生 / エストロゲン / 遺伝子重複 / 卵巣サイクル / 胎生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、昨年度に引き続いてヤモリ肝臓細胞の初代培養を試みたが、継代後に定着率が著しく低下し、安定した培養系を確立できなかった。また、アデノ随伴ウイルスを用いて、糖新生酵素のノックダウンを試みた。ヤモリ胚では血清型1と10が肝臓に感染したが、成体では十分な感染効率を得ることができなかった。 さらに、胎生非哺乳類動物のモデルとしてハイランドカープで実験を行った。卵黄タンパクvtgB, vtgCの発現を誘導できる10nM, 2週間の条件で曝露を行い、糖新生の律速酵素pckとg6pc1の発現を調べた。この魚はpckのアイソザイムと、g6pc1の重複遺伝子を2つずつもち、各遺伝子の片方はE2曝露で発現が低下したが、もう片方は有意な変化を示さなかった。また、受容体アンタゴニストのタモキシフェンをE2と同時に投与したところ、vtgB発現はE2単独曝露群と比べて低下したが、vtgCの発現に有意差は見られなかった。このことは、vtgCの発現維持にエストロゲンが必須でないことを示唆する。 本研究課題を通じて、これまでに以下の事柄を明らかにした。(1)爬虫類メスの血中E2濃度は、先行研究の100分の1程度しかない。(2)血中E2濃度が上昇する繁殖中は、E2濃度がやや低下する排卵後から産卵までの期間を含め、一貫して糖新生酵素の発現が低下する。(3)爬虫類では、g6pc1の重複遺伝子のうち一つがエストロゲンによる発現抑制を受けず、繁殖中も糖新生を維持できる。(4)哺乳類とは独立に胎生を獲得した魚類は、エストロゲン非依存に糖新生や卵黄タンパク合成を可能とする経路をもつ。このことは、胎生移行により、肝臓の代謝制御がエストロゲンから解放された可能性を示唆する。
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