2021 Fiscal Year Research-status Report
雄の性行動調節における末梢から脳へのフィードバック神経機構の解明
Project/Area Number |
20K15837
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
越智 拓海 神奈川大学, 理学部, 助教 (00837180)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ガストリン放出ペプチド / 性機能 / 腰髄視床路(LSt)ニューロン / Cre-loxP組換え / AAV |
Outline of Annual Research Achievements |
雄ラットの性行動において、脳(視床下部領域)では、性的モチベーションや好みなどを制御し、末梢(生殖器や運動ニューロン)は、勃起や射精といった性機能を制御する。代表者らは、雄の性行動を司る脳-脊髄神経ネットワークに着目し、脊髄(腰髄)に存在するガストリン放出ペプチド(GRP)ニューロン系が雄優位な神経ネットワークを構築し、間脳視床下部から投射するオキシトシン(OXT)ニューロンがGRPニューロンで発現するOXT受容体(OXTR)を介して脊髄GRPニューロンを活性化することで勃起や射精などの雄の性機能を制御することを報告している。脊髄GRPニューロンは脊髄(腰髄)から間脳視床領域へと投射する腰髄視床路(LSt)ニューロンとして知られるが、詳細な投射領域や性行動調節メカニズムは不明である。そこで現在は、脊髄GRPニューロンが脳のどの領域に投射するのか解析を進めている。 今年度は、脊髄GRPニューロンで遺伝子組み換え酵素(iCre)を発現するノックインマウス(Grp-iCre KIマウス)(富山大学 森 寿教授より分与いただいた)を導入した。Grp-iCre KIマウスにCre依存的にtdTomatoを発現するレポータマウスを掛け合わせたマウスで脊髄のtdTomato発現を解析した。結果、脊髄GRPニューロンにおいてtdTomato発現が観察され、脊髄GRPニューロンの解析にGrp-iCre KIマウスが有用であることが示唆された。Grp-iCre KIマウス脊髄に、膜移行型蛍光タンパク質(palGFP)を組み込んだアデノ随伴ウイルス(AAV)を感染させた。結果、脊髄GRPニューロンでpalGFPの発現が観察され、軸索までpalGFPで標識されていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は主に脊髄GRPニューロンで遺伝子組み換え酵素(iCre)を発現するノックインマウス(Grp-iCre KIマウス)を用いて、脊髄から脳へと投射する脊髄GRP線維の可視化を精力的に進めている。Grp-iCre KIマウスに蛍光タンパク質tdTomatoがCre組換え後に発現するコンストラクトをRosa26遺伝子座にノックインしたレポーターマウスを掛け合わせ、脊髄GRPニューロンにおけるCre発現をtdTomatoを指標に解析した。その結果、ほぼ全ての脊髄GRPニューロンでtdTomato発現が観察された。次に、Cre発現細胞で膜移行型蛍光タンパク質(palGFP)を発現するAAVをGrp-iCre KIマウス腰髄(L3-L4レベル)に局所・微量投与した。その結果、脊髄GRPニューロンでpalGFP発現が観察された。しかし、palGFP発現線維は胸髄レベルでは観察されたものの脳ではpalGFP発現がみられなかった。現在、AAVのタイターや感染期間の検討を進めている。この解析により、脊髄GRP線維の脳への求心性投射を可視化し、フィードバック投射の入力部位を同定する予定である。また、ラットでも脊髄GRP線維の脳への投射を解析するため、GRPプロモーターの下流にpalGFPを繋いだコンストラクトを組み込んだAAVの作出も進めている。代表者は、GRP promoter-Venusトランスジェニックを作出しており(Oti et al., Endocrinology, 2018)、クローニング済みのプロモーター領域が利用できることは確認済みである。さらに、AAV-GRP受容体プロモーター-mCherryを用いて、投射先であるGRP受容体ニューロンにAAVによる遺伝子導入を行う準備を進めている。一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で購入予定であった試薬等が購入できず、予定していた実験が行えなかった。 以上の理由から、研究の進捗はやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Grp-iCre KIマウスの脊髄GRPニューロンにAAVを用いて膜移行型蛍光タンパク質(palGFP)を発現させ、脊髄GRPニューロンの脳への投射を可視化する。また、成熟野生型ラット雄の脊髄にAAV-Flex-palGFPを感染させ、ラット脊髄GRPニューロンの脳への投射も可視化する。これにより、脊髄GRPニューロンの脳での作用部位を同定する。また、AAV-GRP受容体プロモーター-mCherryを用いて、脳のGRP受容体発現ニューロンへのAAV感染実験を確立する。作用部位を同定し次第、AAV-GRP受容体プロモーターを利用し、GRP受容体発現細胞でDREADDやオプトジェネティクスを導入する。これにより、脊髄GRPニューロンの脳への投射が性行動に与える影響を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により購入を予定していた試薬・実験機器の入荷がなく、予定していた実験を行うことができなかった。また、新型コロナウイルスへの対応のため、予定していた研究打ち合わせも行うことができなかった。購入予定試薬・機器は2022年度には日本に入ってくる予定であり、その費用にあてる。
|
Research Products
(7 results)