2022 Fiscal Year Research-status Report
雄の性行動調節における末梢から脳へのフィードバック神経機構の解明
Project/Area Number |
20K15837
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
越智 拓海 神奈川大学, 理学部, 助教 (00837180)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ガストリン放出ペプチド / 腰髄視床路(LSt)ニューロン / Cre-loxP組換え / AAV |
Outline of Annual Research Achievements |
雄ラットの性行動において、脳(視床下部領域)では、性的モチベーションや好みなどを制御し、末梢(生殖器や運動ニューロン)は、勃起や射精といった性機能を制御する。代表者らは、雄の性行動を司る脳-脊髄神経ネットワークに着目し、脊髄(腰髄)に存在するガストリン放出ペプチド(GRP)ニューロン系が雄優位な神経ネットワークを構築し、間脳視床下部から投射するオキシトシン(OXT)ニューロンがGRPニューロンで発現するOXT受容体(OXTR)を介して脊髄GRPニューロンを活性化することで勃起や射精などの雄の性機能を制御することを報告している。脊髄GRPニューロンは脊髄(腰髄)から間脳視床領域へと投射する腰髄視床路(LSt)ニューロンとして知られるが、詳細な投射領域や性行動調節メカニズムは不明である。そこで現在は、脊髄GRPニューロンが脳のどの領域に投射するのか解析を進めている。 今年度は、ラットGRPプロモーターに遺伝子組み換え酵素(Cre)をつないだAAVベクター(自治医科大学 犬束助教より分与いただいた)を導入した。AAV-ratGrp promoter-CreとAAV-CAG-FLEX-膜移行型蛍光タンパク質(palGFP)を雄ラットの脊髄(L3ーL4レベル)に投与し、脊髄GRPニューロン特異的にpalGFPを発現させた。その結果、脊髄GRPニューロンでpalGFPの発現が観察され、軸索までpalGFPで標識されていた。また、性行動後の神経活性化マーカーの発現とGRP受容体の発現局在をもとに脊髄GRPニューロンの投射先の探索を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はまず、ラットGRPプロモーターに遺伝子組み換え酵素(Cre)をつないだAAVベクター(AAV-ratGrp promoter-Cre)とAAV-CAG-FLEX-palGFPを用いて、脊髄から脳へと投射する脊髄GRP線維の可視化を精力的に進めている。雄ラットの脊髄(L3ーL4レベル)にAAV-ratGrp promoter-CreとAAV-CAG-FLEX-palGFPを感染させ、GRPに対する免疫染色を行い、AAV-ratGrp promoter-Creの特異性を解析した。その結果、脊髄GRPニューロンでpalGFPの発現が認められた。また、性行動後の神経活性化マーカー(pERK)の発現局在をGRPニューロンの投射先と考えられているラットの視床領域で調べたところ、視床室傍核(PVTp)において、射精後にのみpERK発現が増加していた。そこで、GRP受容体(GRPR)プロモーター-ヒトジフテリア毒素受容体(hDTR)-赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子改変(GRPR-RFP Tg)ラットを用いて、PVTpにおけるGRPRの発現を調べた。その結果、PVTpにおいてRFP陽性(GRPR発現)細胞が観察され、その細胞体数は雄で有意に多いことを明らかにした。そこで、PVTpのGRPR発現ニューロンが射精後に活性化されるのかpERKを指標に解析した。結果、射精後にPVTpのGRPR発現ニューロンで有意にpERK発現が増加していた。GRPR-RFP TgラットのPVTpでGRPに対する免疫染色を行なったところ、GRP陽性線維はGRPR発現ニューロンに近接して存在しており、GRP陽性線維の染色強度は雄で有意に高いことも明らかにした。しかし、キャンパス移転に伴い実験が停止したことにより、脊髄からの投射を示す直接的な証拠はまだ得られていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
脊髄(L3ーL4レベル)にAAV-ratGrp promoter-CreとAAV-CAG-FLEX-palGFPを感染させた雄ラットの脳において、膜移行型蛍光タンパク質(palGFP)の局在を解析し、脊髄GRPニューロンのPVTpへの投射を可視化する。これにより、脊髄GRPニューロンの脳での作用部位を同定する。また、GRPR-RFP TgラットPVTpにジフテリア毒素を感染させ、PVTpのGRPR発現ニューロンを特異的に破壊する。その後、性行動解析を行い、脊髄GRP-PVTp GRPRニューロン系が性行動をどのように調節しているかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、研究の進捗が遅れていたうえ、今年度はキャンパス移転により半年間実験を停止せざるを得なかったため。
|
Research Products
(3 results)