2021 Fiscal Year Research-status Report
らせん卵割型発生における割球運命の保存性をもたらす発生システムの解明
Project/Area Number |
20K15849
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
守野 孔明 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20763733)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | らせん卵割型発生 / 発生拘束 / 軟体動物 / 転写因子 / 遺伝子制御ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、らせん卵割動物における割球運命の強固な保存をもたらすGRNの同定と、成立の進化的経緯の解明を目指し、トランスクリプトームと機能解析を組み合わせて検証を進めている。材料として、典型的ならせん卵割型発生を示す扁形動物オオツノヒラムシ、環形動物ヤッコカンザシおよび軟体動物クサイロアオガイを用いる。 1. オオツノヒラムシの割球トランスクリプトーム:扁形動物ヒラムシにおいて割球特異化を担う転写因子を探索するため、8細胞期の1q割球(動物極側)と1Q割球(植物極側)を2バッチより単離し、トランスクリプトーム解析を行った。この結果、1qと1Q割球の間で発現変動遺伝子として複数の転写因子が同定されてきたが、軟体動物や環形動物で割球特異的な発現を示す転写因子は含まれていなかった。このことは、らせん卵割動物の中でも割球特異化機構は多様化していることを示唆する。 2. ヤッコカンザシ初期発生期に発現する転写因子の発現パターン解析:前年度に同定した zygoticに発現が始まる転写因子群の発現パターン解析を進めた。この結果、FoxQ2やPRD型のhomeobox遺伝子などが実際に卵割期に割球特異的な発現を示し、割球特異化に関わる遺伝子の候補が同定されてきていると言える。一方で、それらの発現パターンは軟体動物とは異なっていた。 3. クサイロアオガイにおける候補遺伝子の機能解析:クサイロアオガイとヤッコカンザシに共通で発現する遺伝子について、クサイロアオガイにおける機能解析を進めた。これまでに、TALE型homeobox遺伝子TALE2のモルフォリノによるKD実験から、TALE2が動物-植物極軸に沿った割球運命特異化に必須であることを見出した。一方で、他の遺伝子についてはモルフォリノによるKDで特異的な表現型が得られていないが、これらについては過剰発現による遺伝子機能の類推を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に関しては概ね計画通りに進行しているものの、昨年度にコロナの影響で研究が停滞していた分の遅れは取り戻せていないために、全体としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
オオツノヒラムシの割球トランスクリプトームを16-32細胞期でも行い、より網羅的に割球特異化に関わる遺伝子の候補因子を同定していく。合わせて、オオツノヒラムシおよびヤッコカンザシの卵割期に発現する転写因子群の網羅的な発現パターン解析を行い、らせん卵割型発生で初期に発現する転写因子群の共通点と相違点についての解像度を向上させていく。また、発現パターンの保存性の高い遺伝子については、引き続きクサイロアオガイで機能解析を行い、らせん卵割型発生における役割を明らかにしていき、割球運命の保存性をもたらす遺伝的背景について明らかにすることを目指す。
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