2023 Fiscal Year Annual Research Report
Dissecting the diverse relationship among flowers and flies: attracting flies via exploitation of natural histories of flies
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20K15859
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 昂 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80822775)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 送粉 / 花の匂い / GC-MS / 双翅目昆虫 / キモグリバエ / ヌカカ / キノコバエ / カモメヅル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、双翅目昆虫に送粉される植物の多様性を明らかにするために、送粉者が未知で、双翅目に送粉されると思われる植物分類群において、花の匂いと送粉者の関係性に着目して研究を行った。 双翅目に送粉される植物には、暗赤色や緑色、黄色などの花をもつものが多いことが実施者自身の先行研究から明らかであったため、本研究では、主にキョウチクトウ科、ウマノスズクサ科、ヤマノイモ科、ニシキギ科、セリ科などに着目をし、送粉者の解明および花の匂いの特定を行った。 まず、ニシキギ科の研究からは、日本、北米、台湾に分布するニシキギ属10種の比較を通じて、キノコバエに送粉される種ではアセトインという匂い成分が主成分である一方で、そうでない種ではテルペン類が卓越することが分かった。属内でキノコバエ媒は複数に亘って起源しており、その度にアセトインが獲得されていることも分かった。 次に、キョウチクトウ科植物の研究からは、日本産カモメヅル属植物において、ヌカカ、タマバエ、キノコバエ、キモグリバエ、というこれまで稀だと考えられてきた双翅目の送粉者に特化した植物が発見された。これらの植物では、大きく異なる花香を有していることが分かった。キモグリバエ科に送粉される種においては、花の匂いが送粉者誘引に決定的な役割を果たすこと、その匂い成分が昆虫のフェロモン様であることが示唆された。また、キノコバエ媒の種はアセトインが主成分であり、ニシキギ属と並行してキノコバエへの適応が生じたことが分かった。 以上の研究から、ヌカカやキノコバエ、キモグリバエといった双翅目の細かいグループに応じて、植物が異なる花の匂いをもつこと、しばしばそれが機能的であり、収斂を伴うことが明らかになった。双翅目昆虫は、ハエと一括りの機能群とされることが多いが、実際には植物に多様な選択圧を与えうる分類群であることが示唆される。
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