2023 Fiscal Year Annual Research Report
甲虫類における前翅形態の多様性:捕食者防御と飛翔効率のトレードオフの解明
Project/Area Number |
20K15863
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小島 渉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (70750462)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 甲虫 / 捕食回避 / 飛行 / 物理的防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
硬さの異なるコガネムシ科を用いて野鳥を用いた捕食実験を行い、硬さが野鳥からの捕食回避に有効か検証した。2022年度までにムクドリを用いて検証を行ってきたが、2023年度はそれに加え、スズメも捕食者として用いた。予備実験の結果、スズメは生きた昆虫のみを捕食することが判明したため、3種の生きたコガネムシを提示した。その結果、ムクドリを用いた時と同様、最も硬い種であるハナムグリ類は攻撃を受けることなく無視されることが明らかになった。これは、スズメがすでに硬い種を不適な獲物として学習していることを示唆している。捕食実験に加え、9種の甲虫の硬さの測定を千葉大学にて行った。この実験は2022年度までにも行ってきたが、サンプルサイズが小さかったために、2023年度に追加実験を行った。その結果、引張試験や破断試験などの複数のパラメーターにおいて、ハナムグリ類の値が大きく、他のコガネムシ類に比べ体が硬いグループであることが明確に示された。捕食実験の結果と合わせると、甲虫の硬さが野鳥からの捕食回避に有効であることが示された。この成果は現在国際誌に投稿中である。 次に、硬い体を持つことのコストとして、飛行性能に着目した。フライトミルや風洞を用い、ハナムグリ類(硬い種)とコガネムシ類(柔らかい種)の飛行特性をシミュレーションにより比較した。安定性解析の結果、後者の方が飛行の安定性が高いという予備的な結果が得られつつある。ただし、この飛行特性の違いが硬さと関係するかは現時点では不明である。
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