2022 Fiscal Year Annual Research Report
交雑が誘う適応放散:琵琶湖固有腹足類をモデルとした「超越分離」仮説の検証
Project/Area Number |
20K15866
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊藤 匠 東北大学, 東北アジア研究センター, 学術研究員 (90858903)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 交雑 / 琵琶湖 / モノアラガイ / 多様化 / 外来種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、予定していた全てのサンプルを用いて次世代シーケンサーライブラリを作成し、琵琶湖を中心に、アジア大陸域から日本列島までを網羅した包括的なモノアラガイ類の系統解析、集団遺伝解析を実施した。一方で、解析の結果、非常に多くの外来系統が日本列島に移入していることが判明したため、一部のサンプルについて追加のサンプリングと遺伝解析も行なった。また、それらについて網羅的に写真撮影を行い、外部形態データを取得した。さらに琵琶湖周辺の地史・過去の生物相を知るために文献調査・標本調査を行なった。 網羅的な系統解析・集団遺伝解析の結果から、昨年度までの予察的な解析で示唆されていた琵琶湖における過去の異系統間の交雑が強く示唆されるとともに、殻の形態解析から、琵琶湖内においては他の日本列島地域では見られない多様性が存在していることが明らかになった。また、琵琶湖内でのモノアラガイ類は生息環境も多様であることが、初年度に行った調査から推定されている。加えて、交雑が推定された年代は琵琶湖の地史的な変化が大きい時代であったことから、地史的要因を端緒に個体群間の障壁が変化し、異系統間の交雑が生じたのちに、交雑の影響で形態・生態における多様性が生じた、という仮説が想起された。一方、それぞれの事象の因果関係や可塑性の果たす役割などは完全に排除できておらず、当該仮説はさらなる慎重な検討も必要である。また、本年度の解析と文献・標本調査の結果から、モノアラガイ類では外来系統が日本列島各地に侵入していることが強く示唆され、これらの在来系統に与える生態的・進化的影響は未知である。遺伝子データの量が多く、解析にかなりの時間を要しており、上記の結果は複数の論文として現在最終的な発表の準備中である。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Dispersal is a driver for the diversification of Gyraulus spp. on both continental and oceanic islands.2022
Author(s)
Saito Takumi, Hirano Takahiro, Prozorova Larisa, Do Van Tu, Ye Bin, Shovon Mohammad Shovon, Uchida Shota, Surenkhorloo Purevdorj, Morii Yuta, Kimura Kazuki, Yamazaki Daishi, Sasaki Teturo, Tsunamoto Yoshihiro, Satake Kiyoshi, Fukuda Hiroshi, Suyama Yoshihisa, Chiba Satoshi.
Organizer
World Congress of Malacology 2022, Munich, Germany
Int'l Joint Research
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[Presentation] 琵琶湖固有二枚貝マルドブガイの実態: ドブガイ類で見られた殻形態の平行進化2022
Author(s)
佐野 勲, 齊藤 匠, 伊藤 舜, Ye Bin, 上地 健琉, 瀬尾 友樹, Do Van Tu, 木村 一貴, 平野 尚浩, 山崎 大志, 白井 亮久, 近藤 高貴, 三浦 収, 宮崎 淳一, 千葉 聡
Organizer
日本貝類学会令和4年度(2022年度)大会
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