2020 Fiscal Year Research-status Report
山地性トカゲ類の進化・集団動態から迫る熱帯の高い種多様性と過去の気候変動の関係性
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20K15869
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
栗田 隆気 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (00738841)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有鱗目 / トカゲ / 胎生 / 分類 / correlated evolution |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は熱帯地域の低地および山地に分布するトカゲ類を対象として,種多様化の要因と山地性種の起源の解明を目的としたものである.令和2年度は(1)東南アジアを中心に多様化した有鱗目トビトカゲ亜科のトカゲ類について,繁殖様式の進化に対する生息微環境と行動の影響を調査した.加えて(2)トビトカゲ亜科に属するPelturagonia属の分類学的整理のために形態および遺伝子分析を実施した. (1)については,卵生から胎生への進化がトビトカゲ亜科で独立して2回起こったことを明らかにした.また,構築した系統樹をベースに文献情報などを統合して祖先形質復元を行い,生息環境,動きの速さ,卵生・胎生の繁殖様式が関連して進化したことを示した.これまで有鱗目では,樹上性の種では胎生への進化が生じにくいと考えられていた.しかし,本亜科では樹上性の傾向が強く,なおかつゆっくりとした動きしかできない種で胎生が進化していることがわかった.これらのことから,ゆっくり動くという行動面の対捕食者戦略が介在することによって樹上性の種にも胎生化が生じうるという仮説を提唱した. (2)については,形態および遺伝子の分析により,Pelturagonia属内に独立した種と考えられる9系統を確認した.既知の種と比較した結果,そのうち4種が未記載である可能性を得た.令和3年度以降は追加の標本の形態と遺伝子を分析し,また一部の検体についてはゲノムレベルの遺伝情報を整備して,本属の分類学的整理を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症蔓延のために予定していた海外での調査が行えなかったことから,標本採集と行動分析をすることができなかった.一方,既存の標本・遺伝子分析用検体を活用し,論文発表1件と新たなデータの取得を行った点で,総合的に順調に進展できた.
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Strategy for Future Research Activity |
新たな標本の採集や海外からの標本借用は本研究課題に必須であるが,現在はまだ海外渡航できる状況にない.そこで令和3年度は既存の検体についてゲノムレベルでの遺伝情報を整備することで,少数の検体から集団の過去の動態を推定する.
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Causes of Carryover |
海外での標本採集及び行動実験を予定していたが,感染症蔓延の影響で渡航することができず,旅費,人件費,その他レンタカー代などを執行できなかった. 研究期間全体において新たな標本を採集する機会が少なくなると想定されることから,検体数の少なさを補うために既存の検体についてゲノムレベルの情報を整備し,少数検体の遺伝情報から過去の個体群動態を推定する方針を取る.そのために,これらの一部を物品及び委託費として使用する.
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Research Products
(2 results)