2020 Fiscal Year Research-status Report
新規サンゴ共生藻遺伝子操作技術の確立と共生関連遺伝子の機能解析
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20K15871
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
石井 悠 宮城教育大学, 教育学部, 研究員 (40770813)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 褐虫藻 / 共生 / 遺伝子導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
単細胞藻類である褐虫藻は、サンゴやイソギンチ ャクなどの刺胞動物と細胞内共生し、この共生関係は環境変動により変化する。この可塑的な共生関係は異なる生物間で共生性が進化するメカニズムの解明のモデルとなるが、褐虫藻・宿主共に遺伝子操作技術が確立されていないことからその分子メカニズムは解明されていない。褐虫藻の遺伝子導入法は過去に2つのグループから報告があるが、実験の再現性が得られていないこと、遺伝子導入した細胞が増殖できないことなどから遺伝子の機能解析まで至っていない。そこで本研究では、再現性が高い褐虫藻の遺伝子ノックアウト法と遺伝子ノックダウン法の確立を目指している。 今年度は蛍光セルソーターとのDNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置 (MultiNA)の実験条件の確立を行った。褐虫藻では遺伝子操作を行ったとしても、遺伝子操作の成功率が低いことが問題になっている。そこで遺伝子操作に成功した可能性が高い個体を濃縮するために用いる蛍光活性化セルソーターでの細胞ソーティング・濃縮の条件の調整を行った。また、遺伝子操作実験を行うと複数の成功候補個体が得られるが、そこから本当に目的の操作が成功した個体を特定することは非常に手間のかかる作業である。そこで遺伝子編集成功候補個体の確認を効率化するためのMultiNAを用いたヘテロ二本鎖移動度分析の条件確立を行った。さらに、遺伝子ノックアウトおよびノックダウンに用いる遺伝子配列情報を得るため、褐虫藻のゲノムシーケンスを新学術領域研究「学術研究支援基盤形成」の「先進ゲノム支援」の課題として実施していただいた。得られたデータからゲノムサイズの推定を行い現在ゲノム配列の構築を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画では褐虫藻の自家蛍光と蛍光物質の両方の蛍光を同時に検出することで遺伝子操作成功株の濃縮を行う。褐虫藻の自家蛍光と蛍光物質の蛍光強度の検出のバランスを調整することが必要であるが、遺伝子導入成功のマーカーとなる蛍光を発する褐虫藻が少ないことから条件検討が困難であった。そこで、褐虫藻に蛍光染色を行いポジティブコントロールとして条件検討の調整を行った。 さらに遺伝子編集個体であるかを簡便に確認するため、MultiNAを用いたヘテロ二本鎖移動度分析の条件検討を行った。これまでの研究で得られた褐虫藻の変異株と野生株の遺伝子配列を用いて条件検討を行い、変異株と野生株を本方法で特定することができることを確認した。 褐虫藻のゲノムシーケンスのデータから、ゲノムサイズの推定を行った。その結果720Mbp程度と予想され、これは近縁種のゲノムサイズと比較して妥当な数値であった。染色体レベルでの配列決定方法について予備的な検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に用いた遺伝子操作細胞の濃縮法および、遺伝子操作個体の確認法を用いて、遺伝子ノックアウト個体を作成し、遺伝子操作個体作成方法の最適化を行う。ノックダウン法についても同様に条件の確立を行う。これらの方法用いて褐虫藻の共生に関わると予想される遺伝子の機能解析を行い、刺胞動物と褐虫藻の共生の分子メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
実際に解析に用いている褐虫藻株のゲノム情報が得られることが理想的であったが、技術的な理由から、計画では近縁種のゲノムを用いる予定であった。しかし今年度に、実際に用いている株のゲノム解読を先進ゲノム支援の課題として採択していただくことが出来たため、シーケンスデータの解析を行う必要が生じた。そのため研究計画を見直し、ノックアウト個体の作成を次年度に延期したため次年度使用額が生じた。次年度使用額は遺伝子ノックアウト個体の作成に必要な試薬の購入に使用する。
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