2021 Fiscal Year Research-status Report
Intestinal microbe communtiy and cost of cooperative breeding in a wild bird
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20K15873
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野間野 史明 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (40783816)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 協同繁殖 / 群居性 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物に見られる群れ生活はその利益がコストを上回る場合に維持されると予想される。個体間伝播する腸内細菌は群れ生活の有利性を左右する要因になりうる。本研究は、協同繁殖を行い、それに伴って特異的な群居性を示すエナガ(Aegithalos caudatus)において群居性の程度と腸内細菌群集構造の関係を明らかにすることを目指している。当該年度において発表された研究成果はまだない。近畿地方で対象種エナガの捕獲を開始し、DNA分析用標本(血液・フン)及び個体毎の健康状態の指標となるデータ(体重・体長等)の収集を進めた。開始当初は捕獲効率が低かったが、捕獲方法についていくつか改善すべき点を見出し、捕獲効率の上昇に成功している。またフンサンプル採取に際して外界の細菌による汚染を防ぐ方法を検討し、こちらも改善することができた。さらに、各地域での群れ行動の定性的な把握のため、調査中に発見した群れについて群れサイズ・音声・行動等を記録した。当初の捕獲調査候補地に加えてよりよい調査地点を随時検討しており、聞き取りも含めてエナガの繁殖観察記録等の情報収集を進めることでいくつか新規候補地を設定することができた。野外調査と並行して分子実験の準備(試薬購入・プロトコルの調整)、影響が考えられる気象データ等関連データの準備も徐々に進めている。また、鳥類学・森林生態学の識者と随時議論をし、それを踏まえたサンプリング予定地域の微修正・今後の発展の可能性についての検討などを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初の期待よりも標本の収集効率が悪く、また、年度中の研究代表者の異動などにより実施できた調査の回数が想定より少なくなっている。一方で試行錯誤により調査手法の見直しを行っており、次年度以降はより高い効率での標本収集が期待できる。DNA分析(菌叢解析・宿主の集団遺伝学的分析)はまだ行っていないが、これは採用する分子実験手法が大量サンプルを一括処理するものであることによる。標本が蓄積してから実験を開始する予定である。以上より、一部遅れはあるものの、おおむね予定通りの進展があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き日本国内各地で血液及びフンの標本を収集する。研究予定地域の大幅な縮小等は検討していない。2022年度においては関東地方を中心に調査を行う。標本を用いたDNA分析(エナガの集団遺伝学的分析・腸内細菌群集の定量)についてはすでに実験準備を始めており、まとまった標本が集まり次第、速やかに実験作業を開始する。そのほか気象条件等、分析に用いるデータの整備・データ解析の準備を継続して進める。
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Causes of Carryover |
対象種の捕獲等許可申請に予想より時間を要したこと、また、研究代表者の所属変更に伴う手続き等の作業が発生したことにより、予定よりも野外調査の回数が少なくなっている。このため、調査で得られる標本を用いたDNA分析の予定もずれ込むことになった。捕獲効率を上げることには成功しており、2022年度前半に集中的に野外調査を行って標本数を確保し、後半に実験室での作業を本格的に開始することを計画しており、2021年度分も含めた予算から旅費・調査実験消耗品費の双方が主要支出として見込まれる。
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