2021 Fiscal Year Research-status Report
植物の成長プロセスを考慮した血縁認識機構の進化理論
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20K15876
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
立木 佑弥 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (40741799)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数理モデル / 競争応答 / 共有地の悲劇 / 血縁認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が土壌資源競争にさらされた際に自身の最適資源分配を逸脱して根への資源分配を増加させる。最適配分から逸脱することで、種子生産量などの適応度指標が小さくなってしまうことから、ゲーム理論における共有地の悲劇に喩えられる。このときには、自身の種子生産性を低下させてでも、競争相手より資源を多く獲得するようにふるまうと解釈されている。興味深いことに一部の植物では、この競争時に、競争相手が血縁者だった場合に根の肥大化が起こらず、最適な資源分配により、種子生産を最大化して共有地の悲劇を回避できることが示されている。 血縁認識ができる条件できょうだい間競争を弱める条件を導出するために、空間明示的数理モデルを構築し、種子の分散範囲や、どの程度の近縁者までを血縁者と認識して競争を回避するのかなど生態学的、遺伝学的パラメータ依存性を網羅的に探索した。 その結果、血縁認識の範囲がごく限られている場合には、血縁者に出会ったときに競争を回避する、血縁者間協力が進化しうることを導いた。逆に血縁認識の範囲が広すぎるときには、個体群の大部分の個体を血縁者と認識してしまうため、血縁認識の信頼性が低く、裏切り者の侵入を許した。この条件では、血縁者に対しても共有地の悲劇ゲームと同じく、過剰な根の肥大化が起こった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物の資源競争についての空間構造を取り入れたゲームモデルの構築は順調に進み、血縁認識に基づいた条件戦略の定式化を行うことができた。学会で進捗報告を行い、有用なコメント受けたため、これを反映して論文執筆を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
数理モデル研究に関しては学術論文の投稿を最優先で進めていく。モデルのバリデーションを行うための実験計画を提案し、実験を行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症流行に伴い、予定していた実験の実施が困難となったことに加え、予定していた国際学会への参加を取りやめた。その予算の繰越しが生じた。 当初の予定より遅れてしまったが次年度に実験を実施することで予算を使用する。
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Research Products
(8 results)