2020 Fiscal Year Research-status Report
夜行性カエル類における視覚と体色の多様化プロセスの解明
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20K15879
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
児島 庸介 東邦大学, 理学部, 訪問研究員 (90793026)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、カエル類における適応的形質である体色と視覚の進化と多様化について考察する目的で、光受容タンパク質などの遺伝子に注目し、トランスクリプトーム解析を行った。具体的には、次の手順で解析を行った。まず、RNAシーケンシングで得られたリードをもとにアセンブリを行い、転写産物の塩基配列を網羅的に決定した。次に、脊椎動物で保存性の高いハウスキーピング遺伝子のデータベースと今回得られたアセンブリとの比較によって、アセンブリのクオリティを評価した。これに加えて、RNAシーケンシグリードのアライメントのパターンに基づくアセンブリのクオリティの評価も行った。これにより、目的遺伝子について信頼性の高い塩基配列データを得た。これらの塩基配列データを種間で比較したところ、適応に関わることが予測される複数の遺伝子について、アミノ酸置換や機能の変化を示す結果が得られた。またトランスリプトームデータを用いて種の系統推定を行い、信頼性の高い系統樹を得た。この系統樹に基づいて形質と塩基配列の祖先形質復元を行い、体色や視覚などの形質の進化史を再構築した。その結果、これらの適応に関わる形質の多様化はランダムではなく、一定のパターンに従うことが示唆された。さらに、発現量解析を行い、発現変動遺伝子の探索を行った。遺伝子発現のパターンは基本的に種間でよく保存されていたが、一部の遺伝子については発現量が種間変動することが示唆された。これらの解析結果に関する論文を準備中であり、論文は国際学術誌に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、新規の野外調査とサンプリングを行うことができなかったが、これまでに得られていたサンプルを用いてトランスクリプトーム解析を行い、ターゲットとする遺伝子について信頼性の高い塩基配列データを得ることができた。その結果、形質の進化・多様化に関する新しい知見が得られた。新規のサンプリングを行うことができなかった影響で種数が限られているものの、現段階ですでに論文として発表するに値する結果が得られており、論文を国際学術誌に投稿予定である。以上のことから、研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、新型コロナウイルスの情報を注視しながら適切な計画で研究を行い、計画の変更が必要な場合には柔軟に対応する。現時点の計画としては、野外調査が実施できるようになった段階で、まずは国内でのサンプリングを行い、その後、海外渡航が可能な状況になれば、マレーシアでのサンプリングを行う予定である。サンプリングと併せて、測定機器を用いた表現型の測定を行う。新たにサンプルが得られた場合は、ゲノム決定およびトランスクリプトーム解析を行い、さらなる多様性の解明を目指す。また、これまでに得られているシーケンスデータの解析と論文の準備を進め、論文を国際学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から全ての出張を中止したため、サンプリングのために計上していた旅費は使用しなかった。また、新たなサンプルが得られなかったことから、実験・解析のために計上していた物品費・その他の費用についても、本年度の支出額は予定額より少なかった。この結果生じた次年度使用額と本年度分として請求した助成金を合わせて、新たなサンプリングと、得られたサンプルを用いた分子実験・解析、測定機器を用いた表現型の測定、論文執筆を行う計画である。
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Research Products
(1 results)