2021 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析から明らかにする古代日本人の親族構造:古墳時代の埋葬墓について
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20K15885
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (80734912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 古代DNA / 古墳時代 / 血縁推定 / 核ゲノム / ミトコンドリアゲノム / 埋葬原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、新たに関東地域の4遺跡の古墳時代人骨17点のサンプリングを行い、一部についてDNA分析を進めた。中でも、人骨の状態の良い茨城県ひたちなか市のひたちなか海浜古墳群(磯崎東古墳群、入道古墳群)を優先して進めている。 令和2年度に人骨5点のミトコンドリアゲノム分析が完了していた千葉県木更津市諏訪谷横穴墓群では、残り9点についてもミトコンドリアゲノム分析を完了させた。解析結果は、『木更津市史研究』に報告書として投稿した。ミトコンドリアゲノム全配列で完全一致し、母系系統で血縁関係にある個体が、同一埋葬墓に限らず、隣接した別の埋葬墓にもみられたことから、最終年度はこれらの関係について、核ゲノム分析から検討を行う。血縁を除いて検出されたミトコンドリアDNAの5系統のうち、弥生時代以降の大陸からの渡来人によってもたらされたB4が3系統と突出して多く、縄文的遺伝子型であるM7aおよびN9bは検出されていなかった。この結果は、渡来系集団の遺伝的影響が古墳時代の関東地域にまで及んでいることを示している。こちらについても、最終年度の核ゲノム分析で検証する。ミトコンドリアゲノム分析で結果の得られた13点について、核ゲノム分析の可否について検討を行ったところ、少なくとも9点では可能であることを確認した。核ゲノム分析について、近世人骨のDNAを用いてヒトDNA濃縮実験のための検討を行い、従来のMYbaits HuWGE(Daicel Arbor Biosciences社)に加えて、MYbaits Expert Human Affinities Kit Prime Plus(Daicel Arbor Biosciences社)での実験の有用性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析する人骨が増えてきて、分析に必要な予算が逼迫してきたことから、効率的に核ゲノム分析を行う方法の検討を行っていた。具体的には、令和3年度に新たに発売されたMYbaits Expert Human Affinities Kit Prime Plus(Daicel Arbor Biosciences社)を用いたターゲットエンリッチメントによるヒトDNA濃縮効果について、近世人骨を用いて検討した。結果として、これまでのMYbaits HuWGE(Daicel Arbor Biosciences社)を用いるよりも効率的にかつ安価に分析可能であることが確認された。ただし、血縁推定の精度はMYbaits HuWGEで取得した全ゲノムデータには及ばないことも明らかとなったため、DNAの状態が不良な試料に関しては今後も検討が必要である。しかしながら、最終年度に分析予定の千葉県木更津市諏訪谷横穴墓群および茨城県ひたちなか市のひたちなか海浜古墳群ではDNAの状態が比較的良好であることから、これらに遺跡については、研究の目的である人骨間の血縁推定は問題なく行えると考えられる。以上の検討事項のために、本来よりも研究の進展が遅れたが、必要な研究過程である。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAの状態の良好な千葉県木更津市諏訪谷横穴墓群および茨城県ひたちなか市のひたちなか海浜古墳群の人骨を中心に分析を進める。分析方法として、MYbaits Expert Human Affinities Kit Prime Plus(Daicel Arbor Biosciences社)での分析に変更することで、多くの人骨について血縁推定が実施可能である。
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