2020 Fiscal Year Research-status Report
ニューロンの軸索におけるオルガネラ間接触によるATP動態制御機構の解明
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20K15894
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
壷井 將史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20847123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / プレシナプス / 小胞体 / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
脳はエネルギー需要の非常に高い器官であり、脳虚血や低血糖症等によりエネルギー供給が絶たれると即座に認知機能障害が引き起こされる。神経活動下における神経細胞の恒常性維持は、 ミトコンドリアによるATP産生経路に大きく依存する。しかしながら、プレシナプスにおいて神経活動とミトコンドリアによるATP産生を繋ぐメカニズムはほとんど分かっていない。近年、オルガネラ同士のクロストークがオルガネラの機能を制御することが明らかになってきており、特に小胞体とミトコンドリア間の接触はATP産生やカルシウムイオン濃度の制御等、細胞の恒常性維持に必須の役割を担うことから非常に注目が集まっている。そこで本研究計画では、小胞体-ミトコンドリアによるプレシナプスにおけるATP動態の制御メカニズムを明らかにすることを目指した。 ミトコンドリアによるカルシウム取り込みは、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体の活性化、ひいてはATP産生を亢進することが知られている。そこで本研究ではまず初めに、マウス大脳由来の神経細胞を用いて小胞体-ミトコンドリア接触がミトコンドリアによるカルシウム取り込みに寄与するかを検討した。その結果、小胞体-ミトコンドリア接触形成を担う因子をノックダウンしたニューロンでは神経刺激に応じたミトコンドリアによるカルシウムの取り込みが低下する傾向にあることが分かった。このことは、小胞体-ミトコンドリア接触がミトコンドリアによるカルシウム取り込みの制御に必要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1) マウス大脳皮質ニューロンを用いたプレシナプスにおけるミトコンドリアのカルシウムイメージングの系の構築、および、(2) プレシナプスにおけるミトコンドリアによるカルシウムの取り込みを小胞体-ミトコンドリア接触が制御するかを明らかにすることを目標とし研究を行った。その結果、(1) について、大脳皮質ニューロンにおけるfield stimulationの系の構築、およびカルシウムイメージングの撮影条件の最適化に成功した。さらに、(2) について、小胞体-ミトコンドリア接触を担う因子のノックダウンによりプレシナプスに局在するミトコンドリアの神経刺激に応じたカルシウムの取り込み量が低下するという結果を得た。以上から、本研究は順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、小胞体-ミトコンドリア接触がプレシナプスのミトコンドリアによるカルシウム取り込みの制御に必要であることに成功した。そこで今後は、小胞体-ミトコンドリア接触がミトコンドリアによるATP産生やプレシナプスからの神経伝達物質の放出量の制御に寄与するかを検討する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画として当初、ノックアウトマウスを用いたニューロンの種類ごとのミトコンドリアクリステ構造の解析を行う予定だった。しかしながら、解析に必要なノックアウトマウスのライン構築に遅れが生じ、電子顕微鏡の解析に必要な試薬類、ノックアウトマウスの飼育に必要な飼料やケージも購入しなかった。上記の実験は全て次年度に行い、次年度の使用計画は以下の通り。 電動マイクロインジェクター:500,000円、電子顕微鏡観察のための試薬・実験器具費:800,000円、蛍光顕微鏡観察のための試薬・実験器具費:500,000円、妊娠マウスおよびマウス飼育のためのケージ、 床敷、飼料費:700,000円、神経細胞培養のための試薬 ・実験器具費:300,000円
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